電験三種の科目合格制度とは
電験三種では、科目合格制度が導入されています。たとえば、いずれかの科目に落ちても、他の3科目が合格していれば次の試験で落ちた科目のみに合格するだけで、電験三種の資格を取得可能です。
最初に合格した試験以降、最大で連続して5回まで合格した科目の試験が免除されます。
電験三種は、2022年から年に2回の試験を受けられるようになりました。そのため、実質3年間のうちに4科目すべてに合格すると、電験三種の資格を取得できます。
参照:一般財団法人電気技術者試験センター「科目合格制度(科目合格留保制度)」
電験三種の科目合格制度のメリット・デメリット
電験三種の科目合格制度のメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット | デメリット |
---|---|
・範囲を絞って対策できる ・モチベーションを保ちやすい ・試験までの日数がなくても挑戦しやすい ・仕事が忙しい社会人でも受験しやすい | ・合格までに時間がかかる ・受験するたびに費用がかかる |
科目合格制度を活用することで、範囲を絞って試験対策ができます。電験三種で出題される4科目すべてを対策するのは大変です。途中でモチベーションが落ちることも珍しくありません。
電験三種では科目合格制度が設けられているため、対策する範囲が減り勉強のモチベーションを保ちやすいです。仕事が忙しく勉強時間がなかなか確保できない社会人でも受験しやすい点もメリットといえます。
一方で合格までに時間がかかったり、受験するたびに費用がかかったりする点がデメリットです。合格するまで、勉強を継続しなければなりません。
受験費用は、インターネットで申し込むと7,700円、書面の場合は8,100円かかります。2回受けると15,000円以上の費用が必要です。出費を抑えるためには、少ない回数で合格することが望ましいです。
電験三種の科目合格制度を利用するときのポイント
電験三種の科目合格制度を利用するときのポイントは以下のとおりです。
- 再受験にならないようにする。
- 計画的に取得スケジュールを立てる
- 最初から科目を絞って対策しない
科目合格制度は最初に合格した受験以降は、最大で連続して5回まで合格した科目の受験が免除される制度です。受験回数が5回を超えてしまうと、合格した科目を再受験しなければなりません。
余分に受験料がかかったり、合格を諦めるきっかけになったりする可能性があるため、再受験にならないように気をつけましょう。
また試験の難易度が高い法規を先に合格しておくなど、資格取得までのスケジュールを立てることが大切です。スケジュールを立てておけば、資格取得までの道筋が明確になるため対策に集中できます。
電験三種で出題される科目は少しずつ関係しているため、最初から特定の科目のみに絞って対策しないほうが良いでしょう。全科目の範囲を把握したあとに、対策する範囲を絞り学習してください。
電験三種で出題される4つの試験科目
電験三種で出題される、以下の4つの試験科目について解説します。
- 理論
- 電力
- 機械
- 法規
科目の概要を把握してから対策をおこないましょう。
理論
理論では、電気に関する以下の科目が出題されます。
- 電気理論
- 電子理論
- 電気計測および電子計測
理論では、電磁気学や電気回路に関する問題が多く出題される傾向にあります。出題範囲が広く対策が大変な科目です。理論はその他3科目の土台となるため、きちんと対策する必要があります。
理論科目の試験は、以下のように「A問題」と「B問題」に分かれています。
- A問題:14問(配点:5点 × 14問 = 70点)
- B問題:3問(配点:10点 × 3問 = 30点)
試験時間は90分です。理論は計算問題が多いため、数学の知識が欠かせません。1問に時間をかけすぎると時間が足りずにすべて解けない可能性があるため、素早く正確に解く力が求められます。
なお、電験三種の理論科目については以下の記事で詳しく解説しています。
電力
電験三種の電力は発電所、蓄電所または変電所の設計や運転に関する科目です。送電線路や配電線路、屋内配線の設計もしくは運用などの電気材料の内容も含まれます。
電力では、以下のような電気系統に関する問題が出題されます。
- 発電
- 変電
- 送電
- 配電
試験時間は90分です。電力科目の試験は、以下のように「A問題」と「B問題」に分かれています。
- A問題:14問(配点:5点 × 14問 = 70点)
- B問題:3問(配点:10点 × 3問 = 30点)
電力会社に勤めていたり、発電や送電に関する仕事に従事している人には解きやすい問題が多いのが特徴です。文章問題が多く出題されるため、電気機器の名称を暗記することが重要といえます。
機械
機械科目で出題される分野は、以下のとおりです。
電気機械 | 電力応用 |
---|---|
・変圧器 ・直流機 ・誘導機 ・同機器 ・パワーエレクトロニクス | ・照明 ・電気加熱 ・電動機応用 ・自動制御 ・電気化学 ・情報処理 |
機械では、電気エネルギーの利用や電気機器に関する知識と応用力が必要な問題が出題されます。機械科目の配点は以下のとおりです。
- A問題:14問(配点:5点 × 14問 = 70点)
- B問題:3問(配点:10点 × 3問 = 30点)
機械は他科目と比べると出題される分野の数が多いのが特徴です。出題範囲が広いため、対策が大変な科目といえます。
なお、電験三種の機械科目については以下の記事で詳しく解説しています。
法規
法規は、電気に関する法律について問われる科目で以下の分野が出題されます。
- 電気関係法令
- 電気設備技術基準とその解釈
- 電気施設管理
計算問題よりも文章問題が多く出題されます。法令の暗記は合格のために必須です。法規の配点は以下のとおりです。
- A問題:14問(配点:6点 × 10問 = 60点)
- B問題:3問(配点:13〜14点 × 3問 = 40点)
試験時間が65分間で、他の科目よりも短いのが特徴です。他の科目より問題数が少なく、1問あたりの配点が高い点に注意してください。
【科目別】電験三種の難易度と合格点・合格率
電験三種の以下の科目別に難易度と合格率を解説します。
- 理論
- 電力
- 機械
- 法規
電験三種は基本的に60点を超えると合格です。2022年から電験三種の試験を年に2回受けられるようになったため、合格率は上昇傾向にあります。
理論
理論は電験三種の科目の中で、難易度が高いとされています。理論で扱う電気理論や電子理論などの分野は、他の科目とも密接に関わっているためです。
対策する際は、機械・電力・法規のすべての範囲を網羅しなければなりません。過去5年間の理論の合格率と合格点は以下のとおりです。
実施年度 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|
令和5年上期 | 26.6% | 60 |
令和4年下期 | 24.6% | 60 |
令和4年上期 | 23.1% | 60 |
令和3年 | 10.4% | 60 |
令和2年 | 24.6% | 60 |
令和元年 | 18.4% | 60 |
「令和5年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和3年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
「令和2年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
「令和元年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
計算問題が多いことが、難易度が高いといわれる理由の一つです。計算に手こずり1問に時間をかけすぎると、問題をすべて解けずに点数が取れない可能性があります。
電力
電力は4科目の中でもっとも合格しやすい科目です。電気に関する基礎をきちんと勉強しておけば、点数が取れます。
発電や送電に関する業務に従事している人には解きやすい問題が出る傾向にあります。電力関連の仕事を未経験でも、暗記を頑張れば合格点に達する可能性が高いです。
過去5年間の電力の合格率と合格点は以下のとおりです。
実施年度 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|
令和5年上期 | 25.4% | 60 |
令和4年下期 | 20.8% | 60 |
令和4年上期 | 24.2% | 60 |
令和3年 | 32.6% | 60 |
令和2年 | 17.7% | 60 |
令和元年 | 18.3% | 60 |
「令和5年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和3年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
「令和2年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
「令和元年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
合格率を他の科目と比較しても、15%を下回っている年がありません。4科目の中でも難易度は低めといえます。
機械
機械は、出題される範囲が多いため難易度が高い科目です。対策が大変で、機械に出題される分野をすべてを学習するのは難しいとされています。
過去5年間の機械の合格率と合格点は以下のとおりです。
実施年度 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|
令和5年上期 | 24.6% | 60 |
令和4年下期 | 28.4% | 60 |
令和4年上期 | 11.3% | 55 |
令和3年 | 22.8% | 60 |
令和2年 | 11.4% | 60 |
令和元年 | 26.7% | 60 |
「令和5年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和3年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
「令和2年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
「令和元年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
機械は過去問を解きながら、出題される傾向が多い範囲に絞って学習することが大切です。
法規
法規は電験三種の試験の中でも、とくに合格が難しいといわれている科目です。理由は以下のとおりです。
- 他の科目よりも問題数が少なく、1問あたりの配点が高い
- 試験時間が65分間と短い
また受験時間が最後になるため、集中力が切れてミスが増える点も難しいとされる理由です。過去5年間の法規の合格率と合格点は以下のとおりです。
実施年度 | 合格率 | 合格点 |
---|---|---|
令和5年上期 | 28.8% | 60 |
令和4年下期 | 18.4% | 60 |
令和4年上期 | 14.7% | 54 |
令和3年 | 24.1% | 60 |
令和2年 | 21.3% | 60 |
令和元年 | 17.7% | 49 |
「令和5年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和3年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
「令和2年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
「令和元年度第三種電気主任技術者試験の結果について」
法規は計算問題より文章問題が多いため、暗記が得意な人は点数が取りやすい科目でもあります。
なお、電験三種の合格点については以下の記事で詳しく解説しています。
【科目別】電験三種の勉強方法
電験三種で出題される以下の科目別に対策するコツを解説します。
- 理論|参考書を活用して基礎知識を身につける
- 電力|過去問を繰り返し解く
- 機械|学習範囲を絞って対策する
- 法規|計算問題の対策から始める
電験三種の勉強は独学だけでなく、試験対策コミュニティやイベントに参加する方法もあります。電験倶楽部では、ともに勉強できる試験対策イベント実施と予想問題を提供しています。
予想問題を解くことでより実践的な対策が可能です。電験三種の合格を目指す方は、ぜひ電験倶楽部のコミュニティをご活用ください。
なお、電験三種の勉強方法については以下の記事で詳しく解説しています。
理論|参考書を活用して基礎知識を身につける
理論は参考書を活用して、電気に関する基礎知識を身につけることが大切です。理論は他の科目とも密接に関わっているため、基礎知識が備わっていないと試験全体に影響が出るためです。
そのため参考書で、なにをどこまで学ぶのかを把握する必要があります。計算問題が多いため、電気数学に関する対策もしっかりおこないましょう。
なお、電験三種の参考書については以下の記事で詳しく解説しています。
電力|過去問を繰り返し解く
電力は過去問を繰り返し解くことで対策できます。似たような問題が出題される傾向にあるためです。
過去問を解きながら、どのような問題が出題される傾向にあるのか試験の全体像を掴みましょう。理論に比べると計算問題が少ないため、暗記ができれば点数が取れる科目です。
機械|学習範囲を絞って対策する
機械は、学習範囲を絞って対策することが大切です。試験範囲が広いため、すべての分野を対策するのは困難といえます。
たとえば機械では、以下の問題が高頻度で出題されています。
- 変圧器
- 直流機
- 誘導機
- 同期機
確実に点数を取れる分野と、捨てる分野を分けて学習すると効率的です。科目合格制度があるため、他の3科目を合格してから機械だけに集中して勉強する方法もおすすめです。
法規|計算問題の対策から始める
法規は、計算問題の対策から始めましょう。文章問題が多く出題されるため、暗記が必須な科目です。細かい数値や語句を覚えなければなりません。
先に文章問題の対策をおこなうと、暗記した数値や語句を忘れてしまう可能性が高いです。試験日が近づいてきたら、法律の暗記を始めると効率的に対策ができます。
電験三種の試験日
2024年以降の電験三種の申込期間と試験日は以下のとおりです。
区分 | 上期 | 下期 |
---|---|---|
申込期間 | 令和6年5月20日〜6月6日 | 令和6年11月11日〜28日 |
CBT方式の試験日 | 7月4日〜28日 | 令和7年2月6日〜3月2日 |
筆記方式の試験日 | 8月18日 | 令和7年3月23日 |
電験三種の受験方法は、以下の2種類から選択できます。
- 筆記方式
- CBT方式
CBT方式とは、コンピュータを利用して実施する試験方式のことです。コンピュータに表示された問題に対して、マウスやキーボードを使って回答します。
申し込みは原則インターネットです。やむを得ない理由で書面申込みを希望する場合は、試験センターや本部事務局に問い合わせます。
申し込み方法によって、以下のように受験手数料が異なるため注意が必要です。
インターネットによる申し込み | 7,700円 |
---|---|
書面による申し込み | 8,100円 |
試験日や受験手数料を把握してから、電験三種の対策を始めましょう。
参照:一般財団法人電気技術者試験センター「受験申込方法・受験案内」
科目ごとに対策を行い電験三種の合格を目指そう
電験三種には科目合格制度があるため、一度で合格できなくても問題ありません。最初に合格した試験以降、最大で連続して5回まで合格した科目の試験が免除されます。
現在は試験が年に2回実施されており、3年間で4科目すべてに合格することで電験三種を取得可能です。科目に合わせた対策を実施して、電験三種の合格を目指しましょう。
全電協株式会社では、電験三種の資格取得者を対象として採用を実施しています。実務経験がなくても正社員として採用可能です。
電気工事に興味のある方は、ぜひ以下からご応募ください。