電験三種の理論科目とは?出題範囲・過去問の傾向や合格のコツを解説

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電験(電気主任技術者試験)の入門資格にあたる「電験三種」の試験では「理論」「電力」「機械」「法規」の4科目が出題されます。

中でも「理論」は最難関といわれており、合格率が低い傾向にあります。「計算や公式が多くて難しい」「出題範囲が広すぎて対策のコツがつかめない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

本記事では電験三種 理論科目の傾向と対策について解説します。過去問や合格のコツも紹介するので、ぜひ参考にしてください。

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    電験三種の理論科目とは

    電験三種の理論科目とは、電気設備の保守監督に関する国家資格「電験三種(第三種電気主任技術者試験)」の試験科目の一つです。電験三種試験は以下の表に示す4科目で構成されています。

    試験科目試験時間出題範囲
    理論90分電気理論、電子理論、電気計測および電子計測
    電力90分発電所、蓄電所および変電所の設計および運転、
    送電線路および配電線路(屋内配線を含む)の
    設計および運用並びに電気材料
    機械90分電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、
    電熱、電気化学、電気加工、自動制御、
    メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送および処理
    法規65分電気法規(保安に関するものに限る)および電気施設管理
    参照:一般社団法人電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者試験

    本記事では、電験三種の中で最も難易度が高いといわれる「理論科目」に焦点を当てて解説します。

    電験三種の理論科目の試験構成【過去問あり】

    電験三種の理論科目の試験構成について、2つの観点から解説します

    • 問題数
    • 出題形式

    直近(令和5年度)の試験で実際に出題された過去問も紹介するので、あわせて参考にしてください。

    問題数

    理論科目は「A問題」と「B問題」に分かれており、A問題は14問(配点:5点 × 14問 = 70点)、B問題は3問出題されます(配点:10点 × 3問 = 30点)

    A問題は一問一答形式で出題され、配点は1問あたり5点です。B問題は一問につき2つの小問で構成されており、配点は1問あたり10点(小問1つあたり5点)です。なおB問題には、受験者が選択して解答する問題が1問含まれます。

    基本戦略としては、出題数の多いA問題でできるだけ多くの点数を稼ぐことがポイントです。ただしB問題は少数ながら配点が高いため、B問題の対策も怠らないようにしましょう。

    出題形式

    理論科目の出題形式は、以下の3パターンです

    • 穴埋め問題
    • 正誤判定問題
    • 計算問題

    どのような問題が出題されるのか、一つずつ見ていきましょう。

    穴埋め問題

    穴埋め問題では、与えられた記述の空欄箇所に当てはまる文言や数値、数式を選択する問題が出題されます

    たとえば令和5年度上期試験では、以下のような穴埋め問題が出題されました。

    電気理論における、RLC直列共振回路に関する記述の空欄箇所に入る文言を問う問題です。文言の組み合わせを5つの選択肢から選ぶ方式で解答することが求められています。

    参照:一般社団法人電気技術者試験センター「【問題】令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 理論科目」A問題・問8

    正誤判定問題

    正誤判定問題では、与えられた記述の正誤を判定する問題が出題されます

    たとえば令和5年度上期試験では、以下のような正誤判定問題が出題されました。

    静電界に関する記述の正誤を判定する問題です。5つの記述の中から誤っている記述を選択する方式で解答することが求められています。

    参照:一般社団法人電気技術者試験センター「【問題】令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 理論科目」A問題・問2

    計算問題

    計算問題では、与えられた問題文に沿って演算を行い、適切な値を導き出す問題が出題されます。四則演算に加え開平演算が必要になる場合もあるため、開平機能(√)付きの電卓を各自で用意する必要があります。

    たとえば令和5年度上期試験では、以下のような計算問題が出題されました。

    平衡三相回路に関する計算問題です。計算結果を5つの選択肢から選ぶ方式で解答することが求められています。

    参照:一般社団法人電気技術者試験センター「【問題】令和5年度第三種電気主任技術者上期試験 理論科目」B問題・問15

    計算問題では理論的な知識だけでなく計算スピードも求められます。時間配分に注意しながら、スピード感をもって取り組みましょう。

    電験三種の理論科目の分野ごとの出題傾向

    理論科目における直近3試験分の出題傾向は以下の表の通りです。複数分野にまたがる問題に関しては、中心となる分野を基準に分類しました。

    分野細目令和5年度
    上期
    令和4年度下期令和4年度上期
    電気理論電磁気学5問(1)5問(1)4問
    電気回路7問(1)7問(1)8問(2)
    電子理論半導体1問1問1問
    増幅器・増幅回路1問2問(1)2問(1)
    その他0問1問1問
    電流・電圧・電力計測4問(2)1問(1)2問(1)
    電気計測および
    電子計測
    デジタル計測0問1問0問
    ※括弧はB問題の数を示す
    参照:一般財団法人電気技術者試験センター「試験の問題と解答

    上記の表からわかるように、近年の出題傾向としては、電磁気学と電気回路に関する問題が大半を占めています。中でも、以下の内容は、ほぼ毎回出題される傾向にあります。

    • 磁界(電磁気学)
    • 平行平板コンデンサ(電磁気学)
    • 直流回路(電気回路)
    • 交流回路(電気回路)
    • 増幅器・増幅回路(電子理論)

    理論科目の出題範囲は多岐に渡りますが、これらの内容はもれなく対策するのがおすすめです。

    電験三種の理論科目の合否基準と合格率

    電験三種における理論科目の合否基準と合格率について解説します。

    合否基準

    電験三種の合否基準は合格発表時に公表されるため、毎回異なります。目安としては、各科目ともに「100点満点中60点以上」が合格ラインです。試験が難しく受験者全体の得点が低い場合、最低合格点が引き下げられることもあります。

    なお電験三種の資格を取得するためには、理論科目を含む4科目すべてに合格しなければなりません。

    4科目中一部の科目だけ合格した場合は「科目合格」となり、再度受験する際に最大5回まで当該科目の試験が免除されます。たとえば理論科目だけ合格し、他の科目で不合格となった場合は、不合格となった科目に絞って再挑戦できるのです。

    電験三種の合格基準(最低合格点)については、以下の記事にてより詳しく解説しています。

    合格率

    電験三種における理論科目の合格率はおおむね25%前後で推移しています。たとえば令和5(2023)年8月20日に実施された電験三種試験における理論科目の受験者数は20,994人、合格率は26.6%でした。

    過去5回分の試験における各科目の合格率は以下の通りです。

    実施年度理論電力機械法規
    全体
    (4科目合格者)
    令和5年上期26.625.424.628.816.6
    令和4年下期24.620.828.418.415.7
    令和4年上期23.124.211.314.78.3
    令和3年10.432.622.824.111.5
    令和2年24.617.711.421.39.8
    参照:一般社団法人電気技術者試験センター
    令和5年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」P.2、P.9
    令和4年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」P.7
    令和4年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」P.7
    令和3年度第三種電気主任技術者試験の結果について」P.2、P.7
    令和2年度第三種電気主任技術者試験の結果について」P.7

    なお令和4年以降、電験三種の試験日が増設され、年に2回実施されるようになりました。万が一不合格となった場合でも、およそ半年に一回のペースで再受験が可能です。

    電験三種の理論科目が難しいといわれる3つの理由

    電験三種の理論科目が難しいといわれる理由は大きく3つあります

    1. 出題範囲が広いため
    2. 計算問題が多いため
    3. 応用的な知識が問われるため

    一つずつ解説します。

    1.出題範囲が広いため

    理論科目は出題範囲が広いため、試験対策が難しい傾向にあります

    理論科目で扱う電気理論や電子理論などは他の科目とも密接に関わっているため、機械・電力・法規のすべての範囲を網羅しておく必要があります。そのため対策が打ちにくく、難しさを感じる人も多いのです。

    対策としては、長期目線で学習計画を立てることがポイントです。短期集中型の試験対策ではなく、数ヶ月から数年単位の見通しをもちながら学習を進めることをおすすめします。

    理論科目の対策に時間をかけることで、他の科目の理解にもつながります。

    2.計算問題が多いため

    理論科目は計算問題が多いため、難しいと感じる人が多いです。物理の知識だけでなく、電気数学の知識や計算速度も求められるためです。

    とくに、以下に挙げる基礎的な数学力は、計算問題を解く上で必須です。

    • 四則演算
    • 分数
    • 指数(√計算を含む)
    • 複素数
    • 三角関数
    • ベクトル

    対策としては、できるだけ多くの計算問題を解くことで、計算速度を上げましょう。制限時間内にすべての問題を解ききれるよう、時間を意識して模擬練習することがポイントです。

    3.応用的な知識が問われるため

    理論科目では、公式そのものの知識だけでなく応用的な知識も問われるため、難しさを感じる人が多いです。公式の暗記だけでは対応できない問題も出題されます。

    対策としては、頻出の公式を暗記するだけでなく、練習問題を解きながら出題背景を考えることが大切です。

    具体的には、下記の点を意識して問題に取り組みましょう。

    • 「なぜこの公式が使われているのか」
    • 「公式を使いどのようなプロセスで正答を導き出しているか」

    出題背景を意識することで、応用力を鍛えられます。公式をどのように活用するのか、頭を使いながら取り組むと効果的です。

    電験三種の合格に必要な勉強時間は約1,000時間

    独学で電験三種の取得を目指す場合、必要な勉強時間はおよそ1,000時間といわれています。たとえば毎日3時間ずつ勉強すると仮定した場合、少なくとも約9ヶ月の勉強期間が必要です。

    ただし4科目すべてに一発で合格する必要はありません。まずは特定科目に絞って対策を進め、数年間かけて取得する選択肢もあります

    前述の通り、一部の科目のみ合格した場合は「科目合格」となり、再受験する際に3年(最大5回)以内は当該科目の試験が免除されます。そのため、一部の科目に絞って勉強を進め、数年かけて4科目をじっくり取得するのも現実的な選択肢です。

    電験三種の勉強時間については、以下の記事でより詳しく解説しています。

    電験三種の理論科目に向けた試験対策のコツ

    独学で電験三種の理論科目の試験対策をする際のポイントは、以下の5点です

    1. 参考書で基礎知識を身につける
    2. 過去問や問題集を繰り返し解く
    3. 本番と同じ条件で問題を解く
    4. 学習動画やアプリなどでスキマ時間を有効活用する
    5. 試験対策コミュニティやイベントに参加する

    専門スクールや通信講座で学ぶ方法もありますが、ここでは主に独学で学ぶ方向けの学習のコツを解説します。詳しく見ていきましょう。

    1.参考書で基礎知識を身につける

    まずは参考書に目を通し、何をどこまで学ぶ必要があるかを一通り確認しましょう

    参考書の内容を難しく感じた場合は、電気数学の勉強から始めるのがおすすめです。電気数学の基礎知識を得ることで、理論科目だけでなくその他の科目の理解にも役立ちます。

    電験三種でおすすめの参考書については、以下の記事で解説しています。

    なお参考書の解説を繰り返し読むだけでは実力が身につきません。参考書を一読した段階で試しに過去問を解き、現状の実力を把握するとよいです。現状の実力を把握したら、後述の方法で反復練習に移行することをおすすめします。

    2.過去問や問題集を繰り返し解く

    過去問や問題集を繰り返し解くことで、さまざまなタイプの問題を解く実力をつけましょう

    問題集を反復する際は、解答の正誤よりも正誤の原因を細かく分析することがポイントです。「似た問題が出た時に対応できるか」「実務と照らし合わせるとどうか」などを想定しながら対策を進めることで、応用力が身につきます。

    なお一般社団法人電気技術者試験センターの公式サイトにて、2009年度以降の過去問が閲覧可能です。過去問を解くことで、ぜひ学習の一助としてください。

    参照:一般社団法人電気技術者試験センター「試験の問題と解答

    3.本番と同じ条件で問題を解く

    本番と同じ制限時間で過去問を解いてみることで、制限時間内にすべての問題を解けるように練習しましょう。とくに計算問題では解答速度が求められるため、制限時間を意識した対策が必須です。

    なお電験三種は筆記(マークシート)方式またはCBT方式で実施されます。自分が受験する方式にあわせて、マークシートの記入方法やコンピュータの操作方法を予習しておくことも重要です。

    4.学習動画やアプリなどでスキマ時間を有効活用する

    参考書や問題集に加え、スキマ時間を有効活用できるような学習手段を確保することをおすすめします。電験三種では膨大な勉強時間が必要となるため、通勤中や出先での待ち時間などを有効活用するのが得策です。

    たとえば、YouTubeで配信されている動画コンテンツや、公式を覚えるためのスマートフォンアプリなどを活用するのもよい方法です。

    机に向かって問題を解くことだけが試験勉強とは限りません。ライフスタイルに合わせてさまざまな学習手段を使い分けながら、無理なく長期継続することが合格への近道です。

    5.試験対策コミュニティやイベントに参加する

    試験対策コミュニティや電験三種に関連するイベントに参加するのも有効な対策です。同じ目標をもつ仲間と定期的に情報交換することで、独学で低下しがちなモチベーションを維持しやすくなります。

    電験三種は長期間に及ぶ試験対策が必要なので、コミュニティやイベントを活用しながら、モチベーションを維持することが合格の秘訣です。

    電験倶楽部では、参加者が共に勉強できる試験対策イベント実施、予想問題を提供しています。電験三種を独学する際は、ぜひご活用ください。

    電験三種の資格を活かせる仕事

    電験三種の資格を活かせる仕事の例として、以下があります。

    • ビル内の電気設備のメンテナンス
    • 中小規模の工場や建設現場における電気設備の保安監督
    • 太陽光発電所や商業施設、病院などの電気設備の保安監督

    電験三種はニーズが高い国家資格であり、取得することで仕事の選択肢が増えます。就職先によっては電気主任技術者に選任されることで資格手当が支給されるケースもあります。

    ビルメンテナンス業や発電事業では電気主任技術者の配置が法律で義務付けられているため、需要が安定している点もうれしいポイントです。

    全電協は民間の電気保安法人として、ビルや施設の電気設備に関する保安管理業務に携わっていただける電気主任技術者を募集しています

    電験三種取得後のキャリアパスの一つとして、ぜひご検討ください。電験三種の資格を実務に活かしたい方のご応募を心よりお待ちしております。

    電験三種の理論科目は試験対策を万全に!

    電験三種の理論科目は難易度が高い科目ですが、試験準備を計画的に進めることで合格可能です

    仮に一発合格できなかったとしても、3年以内であれば不合格科目のみ再受験できます。それぞれの人に合った速度で専門知識を身につけながら、長期目線で試験対策を進めてください。

    国家資格である電験三種を取得することで、就業可能な仕事の選択肢も増えます。本記事で紹介した学習のポイントや将来のキャリアプランを考慮しつつ、前向きに取得を目指しましょう。

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