
電験三種の機械の試験概要

電験三種の機械の試験概要について、以下の三つに分けて説明していきます。
- 科目の内容と出題範囲
- 問題数と配点
- 合格基準点と合格率
科目の内容と出題範囲
電験三種の機械の内容と出題範囲は以下のとおりです。
科目 | 内容 |
---|---|
理論 | 電気理論、電子理論、電気計測・電子計測 |
電力 | 発電所、蓄電所・変電所の設計と運転、 送電線路・配電線路の設計・運用と電気材料 |
機械 | 電気機器、パワーエレクトロニクス、電動機応用、照明、 電熱、電気、化学、電気加工、自動制御、 メカトロニクスと電力システムに関する情報伝送・処理 |
法規 | 電気法規・電気施設管理 |
機械では、電気エネルギーの利用や電気機器に関する知識と応用力が求められます。表からわかるように、機械は他科目と比べると出題される分野の数がもっとも多いのが特徴です。
問題数と配点
試験の問題数と配点は以下のとおりです。
問題の種類 | 問題数 | 配点 | 備考 |
---|---|---|---|
A問題 | 14問(問1~問14) | 各5点 | |
B問題 | 4問(問15~問18) | 各10点 | うち2問はいずれか1問を選択 |
問題は2種類あり、A問題は単独の問、B問題は二つの小問で構成される問(小問は各5点)です。試験時間は90分で17問を解く必要があるため、1問にかけられる時間は5分〜10分が目安といえます。
合格基準点と合格率
直近3回の科目ごとの合格基準点と合格率は以下のとおりです。
年度 | 科目名 | 合格基準点 | 合格率 |
---|---|---|---|
令和5年度上期 | 理論 | 60点 | 26.6% |
電力 | 60点 | 25.4% | |
機械 | 60点 | 24.6% | |
法規 | 60点 | 28.8% | |
令和4年度下期 | 理論 | 60点 | 24.6% |
電力 | 60点 | 20.8% | |
機械 | 60点 | 28.4% | |
法規 | 60点 | 18.4% | |
令和4年度上期 | 理論 | 60点 | 23.1% |
電力 | 60点 | 24.2% | |
機械 | 55点 | 11.3% | |
法規 | 54点 | 14.7% |
参照:一般財団法人電気技術者試験センター
「令和5年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和4年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
合格基準点は100点満点中60点が原則です。ただし、受験者の平均点が低い年には60点未満に調整されます。
また、合格率は例年10%〜30%で推移しており、1科目の合格率としてみれば合格の難しさが読み取れます。

電験三種の機械が難しいとされる理由

電験三種の機械が難しいとされる主な理由は以下のとおりです。
- 範囲が広く、かつ毎年偏りなく出題される
- 各分野に計算問題があり、覚えるべき公式が多い
- 機械に対するイメージが無いと内容を理解しづらい
機械は理論と並ぶ難関科目であり、闇雲に対策しても合格は難しいといえます。
本記事でこれから説明する出題傾向の分析、効果的な受験戦略・勉強法が合格の鍵です。ぜひ最後までチェックして実践しましょう。

過去問からみる電験三種の機械の出題傾向

電験三種の機械の過去問からみる出題傾向は以下の表のとおりです。出題傾向から力を入れるべき分野がわかるので、勉強を開始する前に押さえておく必要があります。
項目 | 令和5年度上期 | 令和4年度下期 | 令和4年度上期 |
---|---|---|---|
直流機 | 2 | 1 | 2 |
同期機 | 2 | 4 | 2 |
変圧器 | 3(1) | 2 | 2 |
誘導機 | 3 | 3 | 3 |
パワエレ | 2(1) | 2(1) | 2(1) |
電動機応用 | 1 | 1 | 2 |
照明 | 1 | 1(1) | 0 |
電熱 | 1(1) | 1 | 1(1) |
電気化学 | 0 | 0 | 1 |
自動制御 | 1 | 1(1) | 1(1) |
処理情報 | 2(1) | 3(1) | 3(1) |
参照:一般財団法人電気技術者試験センター「試験の問題と解答」
表のとおり、問題の分野は4機、パワエレ、電動機応用、照明、電熱、電気化学、自動制御、情報処理に分けられます。
4機とパワエレ、情報処理はコンスタントに出題数が多い分野です。その他ほぼすべての分野が毎年出題されていますが、照明や電気化学は出題されない年があります。
また、機械は知識問題より計算問題が多い科目です。例年、知識と計算がおよそ4:6の割合で出題されるため、計算問題での得点確保が合格に不可欠といえます。

電験三種の機械の合格に必要な受験戦略

機械を含む電験三種の全科目の受験戦略について、以下の二つに分けて説明していきます。
- 科目別合格制度を念頭に年単位の目標を設定する
- 目標をベースに学習プランを立てて勉強を進める
各科目の勉強に取りかかる前に、長期的な戦略をしっかり立てることが大切です。
科目別合格制度を念頭に年単位の目標を設定する
まず、科目別合格制度を念頭に、機械と残りの3科目をいつまでに合格するか目標を設定する必要があります。
科目別合格制度とは、前年度・前々年度に合格した科目が免除される仕組みです。制度を活用して2年〜3年で段階的に合格を狙うか、1年で4科目の一発合格を狙うかによって勉強の進め方が大きく異なります。
目標設定の際には、合格を目指す科目の順番決めも大切です。理論の直流・交流の知識が機械の4種の理解に役立つなど、理論で学ぶ知識は機械の学習に活かせます。そのため、機械は理論の後に学ぶのが効率的です。
目標をベースに学習プランを立てて勉強を進める
合格目標をベースに学習プランを細かく立てて、試験勉強を計画的に進めていく必要があります。期間を区切ることで今やるべきことが明確になり、勉強にメリハリもつくためです。
たとえば、1年で合格を目指す場合、以下のパターンが例として挙げられます。
- 最初に理論と機械を3ヶ月ずつ勉強
- 次に電力、法規を2ヶ月ずつ勉強
- 直前期には総復習
機械は出題範囲が広く、深い理解が必要な分野も多いので、とくに時間を割くべきです。また、勉強が進むにつれて計画どおりにいかない場合も出てくるため、柔軟に対応する必要があります。

文系でも合格できる!電験三種の機械の勉強法6選

文系・理系にかかわらず、初学者でも一から学んで合格できる勉強法6選を紹介します。
- 基礎的な参考書を用いて全体像を押さえる
- 過去問で合格の水準を把握して現状との差を埋めていく
- 集中する分野と捨てる分野を見極める
- 公式など必要な知識は理解した上で暗記する
- 数学や理科で苦手な箇所はそのままにせず学びなおす
- 試験対策コミュニティやイベントに参加する
機械の試験といえど理数系の高度な知識を求められるわけではなく、高校基礎レベルが一つの目安です。基本的な計算力があり基礎から着実に積み上げていけば、文系出身の受験生でも合格できています。
1.基礎的な参考書を用いて全体像を押さえる
まずは基礎的な参考書を用いて、分野の全体像や必要な知識をひととおり押さえる必要があります。
一つひとつを深掘りするのではなく、基礎の考え方や知識に絞って学ぶのがポイントです。分野の中で4機やパワエレは内容が相互に関連しており、全体を早めに学ぶことで理解が深まります。
機械の問題はイメージが湧かず理解しにくい場合があるため、図解で学習するのがおすすめです。とくに参考書は初学者向けにカラーの図解が充実していると、スムーズに理解できます。また、YouTubeの動画や電験に関するホームページ、通信講座を活用する手もあります。
本サイトでは以下の記事でおすすめの参考書を紹介しているので、気になる方はぜひご覧ください。
2.過去問で合格の水準を把握して現状との差を埋めていく
基礎を理解した上で、過去問の演習により合格に必要な実力を把握し、現状との差を埋めるように勉強を進めていきます。
機械の出題範囲は幅広いため、合格点を目指して効率的に学ぶことが重要です。また、例年似た問題も出題されるため、過去問の演習は10年以上さかのぼって行うのが望ましいといえます。
過去問は公式ホームページで公表されています。また、単元ごとに問題が分かれていて解説が充実している問題集を使用すると、よりスムーズな演習が可能です。
参照:一般財団法人電気技術者試験センター「試験の問題と解答」
3.集中する分野と捨てる分野を見極める
過去問の傾向をもとに4機とパワエレを集中的に学んだ上で、他分野は得意・不得意を見極める必要があります。
毎年の出題数が多く、他科目と関連性も高い4機とパワエレを最優先で学ぶのがポイントです。また、その他の分野も広く出題されるため、基本的には捨てずに広くやると着実に点数が伸びます。
一方で、あくまで合格基準点は全体の6割であり、短期で合格を目指す際には、最低限のみ押さえる分野や捨てる分野をつくるのも選択肢の一つです。出題傾向や自身の得意・不得意をもとに、最適な戦略を立てましょう。
4.公式など必要な知識は理解した上で暗記する
公式など必要な知識は、丸暗記でなく理解した上で暗記すれば、忘れにくく応用が利きます。
とくに、機械で頻出の計算問題を解くためには、多くの公式を覚えることが不可欠です。異なる分野で似た公式が出てくる場合があるので、公式の意味を理解して覚えれば他分野にも応用できます。
参考書の説明を読んで深く理解した上で、演習で何度も使用することで定着させるのがおすすめです。
5.数学や理科で苦手な箇所はそのままにせず学びなおす
文系または理系でも数学や理科が苦手な場合、わからない部分を放置せずに基礎を学びなおす必要があります。
必要な理数系の知識は他科目でも共通するため、都度しっかり理解していくのがかえって効率的です。
学びなおす際には、機械の合格に向けた知識として必要な部分だけ学ぶ意識を持ちましょう。電験三種のために作成された、理数系の学びなおしの教材は無駄がなくおすすめです。
6.試験対策コミュニティやイベントに参加する
座学の継続以外で、試験対策コミュニティやイベントへの参加も意義があります。
電験三種の勉強は長期戦であり、ときには周りの力を借りることも大切です。コミュニティに参加すればモチベーションが向上し、知らなかった情報が手に入る可能性もあります。
たとえば、電験倶楽部では受験生が一緒に勉強できる試験対策イベントや予想問題のプレゼントを実施しているので、ぜひチェックしてみてください。

電験三種の機械の勉強で得られる知識の有用性

電験三種の機会で得られる知識の有用性について、以下の二つの観点から説明します。
- 電験一種・二種の取得や社内の昇格試験合格につながる
- 電気主任技術者としての実務に役立つ
試験勉強の最大の目的は資格取得である一方で、機械の勉強で得られる知識は、その先の未来でも役立つため学ぶ価値が高いものです。
電験一種・二種の取得や社内の昇格試験合格につながる
機械を含む電験三種の勉強は、電験一種・二種の取得や社内の昇格試験合格につながります。
機械の勉強で得られた4機などの知識は、他の電験でも出題されるものです。また、電気関連の会社の場合、昇格試験において機械の知識を活かせることもあります。
とくに、電験一種・二種は、三種よりも使用電圧が高い電気工作物を扱える、希少性のある資格なので、さらなる昇給が見込めます。
電気主任技術者としての実務に役立つ
電験三種の機械の勉強で得られる知識は、電気設備の保守・監督の業務に役立つこともポイントです。
試験では、プロとして活躍するために必要となる考え方や知識を習得していることが求められます。たとえば、変電所の変圧器の保守管理においてトラブルが発生した場合、変圧器の構造や損失の深い知識があれば、自ら原因を突き止め、迅速な対応や提案が可能です。
なお、資格取得後に実務経験がなくても、入社して経験を積める会社もあります。
たとえば弊社では、業界未経験でも、お客様の課題を技術で解決する想いをもつ方を採用し、入社後には手厚い教育でサポートしています。ご興味をお持ちの方はぜひ以下のページをご覧ください。

効果的な受験戦略と勉強法で電験三種の機械に合格しよう

出題範囲が広い難関科目の機械に合格するためには、出題傾向の分析や効果的な受験戦略と勉強法が不可欠です。
学習を進める前に、各科目の合格目標やスケジュールを設定する必要があります。
文系・理系問わず、初学者は以下の勉強法で基礎から積み上げるのがおすすめです。
- 基礎的な参考書を用いて全体像を押さえる
- 過去問で合格の水準を把握して現状との差を埋めていく
- 集中する分野と捨てる分野を見極める
- 公式など必要な知識は理解した上で暗記する
- 数学や理科で苦手な箇所はそのままにせず学びなおす
- 試験対策コミュニティやイベントに参加する
また、機械の勉強で得られた知識は、さらなる収入アップやプロとして活躍する未来へとつながります。本記事を参考に、電験三種の機械の合格に向けた勉強を進めましょう。