電験三種の難易度が高いと言われる背景
電験三種の難易度が高いと言われる背景として、以下2つの観点から解説します。
- 電気系国家資格との難易度比較
- 電験一種・二種との難易度比較
電気系国家資格との難易度比較
電験三種の合格率は2割程度であり、電気系国家資格の中で合格率が最も低いため、難易度が高いと言われています。
令和5年度の電気系国家資格の合格率について、以下の表にまとめました。
資格名 | 令和5年度の合格率 |
---|---|
電験三種(電気主任技術者三級) | 21.2%(令和5年度下期) |
第二種電気工事士 | 58.9%(令和5年度下期・学科) |
第一種電気工事士 | 61.6%(令和5年度下期・学科) |
2級電気工事施工管理技士 | 43.0%(令和5年度後期・二次) |
エネルギー管理士 | 37.8%(令和5年度) |
消防設備士(甲種) | 29.0%(令和5年度) |
消防設備士(乙種) | 38.9%(令和5年度) |
参照:一般財団法人電気技術者試験センター
「令和5年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和5年度第二種電気工事士下期学科試験の結果について」
「令和5年度第一種電気工事士学科試験の結果について」
参照:一般財団法人建設業振興基金試験研修本部「令和5年度2級電気工事施工管理技術検定結果表」
参照:ECCJ省エネルギーセンター「令和5年度第45回エネルギー管理士試験合格者発表」
参照:一般財団法人消防試験研究センター「試験実施状況」
電験三種は合格率が2割程度のため独学での合格は難しいとされていますが、決して不可能ではありません。独学で合格するための方法について以下の記事に詳しくまとめているため、あわせてご確認ください。
電験一種・二種との難易度比較
電験三種の合格率が1〜2割である一方、電験一種・二種の一次試験合格率は2〜3割のため、電験三種の難易度は高いとされます。
過去3年間の電験三種合格率と電験一種・二種の一次合格率について、以下の表にまとめました。
合格率 | 電験一種(一次のみ) | 電験二種(一次のみ) | 電験三種 |
---|---|---|---|
令和5年度 | 33.0% | 24.5% | 16.6%(上期) 21.2%(下期) |
令和4年度 | 30.8% | 35.2% | 8.3%(上期) 15.7%(下期) |
令和3年度 | 30.9% | 25.7% | 11.5% |
ただし、電験一種・二種の二次試験合格率は1〜2割程度であり、電験三種の合格率とあまり変わりません。電験一種・二種の二次試験合格率は以下のとおりです。
合格率 | 電験一種(二次のみ) | 電験二種(二次のみ) | 電験三種 |
---|---|---|---|
令和5年度 | 17.9% | 17.7% | 16.6%(上期) 21.2%(下期) |
令和4年度 | 20.9% | 24.0% | 8.3%(上期) 15.7%(下期) |
令和3年度 | 8.0% | 17.2% | 11.5% |
参照:一般財団法人電気技術者試験センター
「令和5年度第一種及び第二種電気主任技術者試験一次試験の結果について」
「令和5年度第一種及び第二種電気主任技術者二次試験の結果について」
「令和 5 年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和 4 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
電験三種4科目の難易度が高い3つの理由
電験三種4科目の難易度が高い理由は、合格率の低さに起因します。電験三種の合格率が低い理由は以下の3つです。
- 問題の出題範囲が広い
- 応用問題が多い
- 科目別合格制度を利用している
それぞれの理由について詳しく解説します。
1.問題の出題範囲が広い
電験三種4科目の合格率が低い理由として、問題の出題範囲が広い点が挙げられます。一般財団法人電気技術者試験センターより提示された出題範囲は、以下のとおりです。
理論 | 電気磁気理論 電気回路理論 固体電子理論 真空電子理論 電子回路理論 電気・電子計測 |
電力 | 発電所 蓄電所 変電所の設計・運転 送電線路・配電線路(屋内配線を含む)の設計・運用並びに電気材料 |
機械 | 電気機器 パワーエレクトロニクス 電動機応用 照明 電熱 電気化学 電気加工 自動制御 メカトロニクス並びに電力システムに関する情報伝送・処理 |
法規 | 電気法規(保安に関するものに限る。) 電気施設管理 |
上表のとおり、試験の出題範囲が明確に提示されています。しかし出題の範囲自体が広く、すべての範囲をカバーしなければなりません。
2.応用問題が多い
電験三種の試験は応用問題が多いことも、合格率が低い理由です。電験三種の問題作成方針の資料にも、「理論や法令等の理解に立った応用力・判断力等を重視する」と記載されています。
また試験の問題は、過去問から出題されることは少ないとされています。問題を暗記しても意味はないため、過去問を解きながら応用力を身につけなければなりません。
参照:電気技術者試験センター「令和6年度第三種電気主任技術者試験に係る問題作成方針」
3.科目別合格制度を利用している
電験三種では「科目別合格制度」が設けられているため、4科目の合格率は低いとされています。科目別合格制度は1科目ずつ試験を受けられる制度のことです。
一発で4科目を合格できなくても、3年以内に4科目を合格すれば資格取得できます。つまり、一度で4科目すべてを合格する必要がないことにより、必然的に合格率が下がっていると考えられるのです。
また電験三種では令和4年度(2022年)より、年2回試験を受けられるようになりました。年2回試験が受けられることで、科目別合格制度を利用する受験者が増えています。
【最新】令和5年度下期の電験三種合格結果
令和5年度下期の電験三種合格結果は以下のとおりです。
- 令和5年度下期の4科目合格率は21.2%で上昇傾向
- 令和5年度下期の科目合格率は35.7%
各項目について詳しく解説します。
令和5年度下期の4科目合格率は21.2%で上昇傾向
令和5年度下期の受験者数・合格者数・4科目合格率について、以下の表にまとめました。
受験者数 | 24,567 |
合格者数 | 5,211 |
合格率 | 21.2% |
以下の令和4年度・令和5年上期の合格率と比較すると、電験三種の合格率は上昇傾向です。
令和4年度上期合格率 | 8.3% |
令和4年度下期合格率 | 15.7% |
令和5年度上期合格率 | 16.6% |
参照:一般財団法人電気技術者試験センター
「令和 5 年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和 4 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
令和5年度下期の科目合格率は35.7%
令和5年度下期の科目合格者数と科目合格率について、以下の表にまとめました。なお合格者数は、4科目合格者数をのぞいた数です。
科目合格者数 | 8,761 |
科目合格者率 | 35.7 % |
以下の令和4年度・令和5年上期の科目合格率と比較すると、科目合格率も上昇しています。
令和4年度上期科目合格率 | 29.4% |
令和4年度下期科目合格率 | 28.7% |
令和5年度上期科目合格率 | 32.8% |
参照:一般財団法人電気技術者試験センター
「令和 5 年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和 5 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和 4 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和 4 年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
【科目別】電験三種の過去問とその特徴
実際に電験三種の試験で出題された問題について、科目別の問題と特徴を紹介します。
- 理論
- 電力
- 機械
- 法規
理論
理論は、計算式の暗記だけでは解けない応用問題が多いため難しいとされています。令和5年度下期の理論で出題された問題は以下のとおりです。
引用:一般財団法人電気技術者試験センター「【問題】令和5年度第三種電気主任技術者下期試験 理論科目」
理論は計算問題が約8割、文章問題が約2割で構成されています。計算の応用力を高めるには過去問を繰り返し解き、出題傾向や解き方を身につけることが大切です。
電験三種の理論科目に向けた試験対策のコツについて以下の記事に詳しくまとめているため、あわせてご確認ください。
電力
電力は発電・変電・送電・配電に関する概念や、制御を理解したうえで計算も問われるため難しいとされています。令和5年度下期の電力で出題された問題は以下のとおりです。
引用:一般財団法人電気技術者試験センター「【問題】令和5年度第三種電気主任技術者下期試験 電力科目」
なお電力は4科目の中で比較すると、問題の難易度は低いと言われています。ただし文章・計算問題が均等に出題されるため、どちらかに偏りすぎないようバランスよく勉強しましょう。
機械
機械は4科目の中でも出題範囲が広く、覚えるべき計算式が多いため難しいとされています。令和5年度下期の機械で出題された問題は以下のとおりです。
引用:一般財団法人電気技術者試験センター「【問題】令和5年度第三種電気主任技術者下期試験 機械科目」
令和5年度下期では出題頻度が多いとされていた「情報」ではなく、「自動制御」から出題されました。勉強に取り組む際は出題頻度にとらわれず、過去問を解いて応用力を身につけなければなりません。
電験三種の機械の勉強法について以下の記事に詳しくまとめているため、あわせてご確認ください。
法規
法規は4科目の中で1問あたりの配点が高く、暗記しなければならない内容も多いため難しいとされています。令和5年度下期の法規で出題された問題は以下のとおりです。
引用:一般財団法人電気技術者試験センター「【問題】令和5年度第三種電気主任技術者下期試験 法規科目」
また法規では文章問題だけでなく、計算問題も出題されます。文章・計算のどちらかに特化せず、バランスよく勉強に取り組みましょう。
電験三種の勉強前に知っておくべき3つのポイント
電験三種の難易度の高さを乗り越えるために、勉強に取り組む前に知っておくべきポイントは以下の3つです。
- 知識レベルに合う勉強法を取り入れる
- 勉強時間を確保する
- 科目合格制度を活用する
各ポイントについて詳しく解説します。
1.知識レベルに合う勉強法を取り入れる
自分の知識レベルに合う勉強法を取り入れることで、効率よく電験三種の勉強に取り組めます。とくに初心者や文系出身者の場合は電気に関する基礎知識を身につけたうえで、応用問題に取り組むのがよいです。
電気の知識がある理工系出身者や再受験者の場合は、知識レベルに合う参考書を取り入れると効率よく勉強を進められます。
また電験三種の試験に関する勉強会や、イベント・コミュニティに参加するのもおすすめです。共に勉強する仲間を見つけられると、モチベーションを維持しながら勉強ができますよ。
電験倶楽部では、電験三種の合格を目指す仲間と共に勉強できたり、試験対策イベントを実施したりしています。電験三種の合格を目指すなら、ぜひ電験倶楽部のコミュニティにご参加ください。
2.勉強時間を確保する
十分な勉強時間を確保することも、効率よく勉強を進めるためのポイントです。初心者や文系出身者の場合、電験三種合格までに必要な勉強時間は1,000時間程度とされています。試験日を把握したうえで、勉強時間を確保しなければなりません。
なお理工系出身者の場合は、500時間程度の勉強時間が必要です。仕事や学業と両立する際は、勉強スケジュールを組みましょう。電験三種の勉強スケジュールを組む3つのポイントについて、以下の記事に詳しくまとめているため、あわせてご確認ください。
3.科目別合格制度を活用する
試験日までに十分な勉強時間が確保できない場合は、科目別合格制度を活用しましょう。試験は年2回実施されるため、半年で1科目を合格するペースであれば2年で資格を取得できます。
また独学で電験三種の合格を目指す場合も、科目別合格制度の活用がおすすめです。独学で電験三種に合格するコツについて、以下の記事に詳しくまとめているため、あわせてご確認ください。
令和6年度電験三種の試験概要
令和6年度電験三種の試験概要は以下のとおりです。
試験方法 | 令和6年度上期の試験日 | 令和6年度下期の試験日 |
---|---|---|
CBT方式 | 令和6年7月4日~7月28日(25日間) | 令和7年2月6日~3月2日(25日間) |
筆記方式 | 令和6年8月18日 | 令和7年3月23日 |
電験三種の詳しい試験概要について、以下の記事に詳しくまとめているため、あわせてご確認ください。
電験三種は難易度が高いものの合格は可能!効率よく勉強に取り組もう
電験三種は電気系国家資格の中で最も合格率が低く、難易度が高いと言われています。効率よく勉強を進めるには、知識レベルに合う勉強方法を取り入れるのがおすすめです。
また電験三種は出題される範囲が広く、応用力が必要な問題が多いため、十分な勉強時間を確保しなければなりません。もし勉強時間を確保できない場合は、科目別合格制度を活用し、資格取得を目指しましょう。
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