電験三種とは
電験三種とは、電気設備の保守・監督を行うための国家資格です。正式名称は「第三種電気主任技術者試験」といいます。取得することで出力5,000キロワット以上の発電所を除く電圧5万ボルト未満の事業用電気工作物の工事や保守、保安監督を務められます。
電験三種は、電気主任技術者試験の中ではもっともハードルが低い試験です。電気主任技術者として働きたいと考えた際に最初に取得を目指したい資格といえます。
参照:一般財団法人 電気技術者試験センター「電気主任技術者の資格概要と電気工作物の範囲」
電験三種を取得するとできる業務
電験三種を取得すると、電気設備に対して以下の業務ができます。
- 点検
- 故障対応
- 清掃
点検
電験三種を取得すると、電気設備の点検を行えます。
電気設備は、不具合によって大きな事故に発展する可能性があるため点検が欠かせません。電気事業法においても、事業用の電気工作物の工事、維持に関する保安を監督させるために電気主任技術者の選任が定められています。
法律でも定められているように、電圧が高い電気設備は事故の危険性があるため正しい知識を持った技術者が点検を行わなければなりません。電気設備の種類によっては法定点検が義務付けられており、電気主任技術者が主になって点検を行います。
参照:総務省「電気事業法第四十三条」
故障対応
電気主任技術者は、故障対応も行います。担当する電気設備が故障した場合、不具合・故障箇所を診断してどのような修理を行うべきかを判断します。
また、電気工事士に修理を依頼して作業に立ち会うのも役割の一つです。作業が安全に行われるように、作業に立ち会って監督を行う必要があります。
清掃
電気設備の清掃は、電気主任技術者の仕事の一つです。電気設備にほこりがたまってしまうと、ショートして不具合につながる可能性があります。そのため、定期的な清掃が必要です。
電気設備を適切に清掃するためには、電気設備に関する知識が欠かせません。わずかなほこりで重大な事故につながる恐れもあるため、定期的に点検を行って電気設備を綺麗に保つ必要があります。
電験三種と第一種・第二種との違い
電験三種と第一種・第二種の違いは、取り扱える電圧です。以下のように電圧が異なります。
資格 | 取り扱える電気設備の電圧 |
---|---|
第一種電気主任技術者 | 上限なし |
第二種電気主任技術者 | 17万ボルト未満 |
第三種電気主任技術者 | 5万ボルト未満 |
第三種は電気主任技術者の中で取り扱える電圧がもっとも低い資格です。とはいえ、電気主任技術者の業務は独占業務であるため需要が高いです。
電験三種と電気工事士の違い
電験三種と似た資格で電気工事士がありますが、両者の違いは資格を取得することでできる業務です。
それぞれの資格でできる業務は、以下の通りです。
資格 | 業務内容 |
---|---|
電気主任技術者 | 電気設備の保安・監督業務 |
電気工事士 | 電気設備の施工・修理業務 |
どちらも重要な資格であるため、必要に応じて取得するとよいでしょう。学習する内容に重複はありますが、試験の難易度は電験三種のほうが高いです。どちらも取得していない場合は、電気工事士から取得してステップアップしていくのも一つの方法です。
電験三種の取得方法
電験三種の取得方法には、以下2つの方法があります。
- 電験三種の試験に合格する
- 電験三種に必要な単位・実務経験を満たす
電験三種の試験に合格する
電験三種は、試験を受けて合格することで取得可能です。すぐに電験三種の資格を取得したい場合は、試験を受けるほうがよいでしょう。受験資格として実務経験を求められないため、異業種からの受験も可能です。
過去は年1回しか受験できませんでしたが、2022年から試験回数が年2回に増えており、資格取得のチャンスが増えています。
なお、電験三種の認定校である高校や専門学校、大学などを卒業したものの不足単位がある場合は、試験で不足単位分の科目に合格すれば取得できます。
参照:一般財団法人 電気技術者試験センター
「第三種電気主任技術者の資格取得フロー」
「試験実施状況の推移」
電験三種に必要な単位・実務経験を満たす
電験三種は、認定校で必要な単位を修了して所定の実務経験を満たすことでも取得可能です。所定の学歴・実務経験を満たした認定による資格取得は、有資格者全体の24%ほどであり少数派です。
単位取得や実務経験の獲得に年単位の時間がかかるものの、試験を受けずに確実に資格取得できます。認定校を卒業しており、すぐに取得しなければならない状況でなければ、選択肢の一つとして頭に入れておきましょう。
参照:一般財団法人 電気技術者試験センター「第三種電気主任技術者の資格取得フロー」
参照:経済産業省「電気保安人材の中長期的な確保に向けた課題と対応の方向性について」
電験三種の試験概要
電験三種の試験概要を以下の観点から解説します。
- 試験内容
- 受験資格
- 試験時期・試験日
- 申込方法および受験料
試験内容
電験三種は、以下4科目の試験があります。回答方式は試験方法によってマークシート方式とCBT方式に分かれています。
- 理論
- 電力
- 機械
- 法規
4つの科目すべてに合格すると、電験三種の合格となります。
合格基準は、基本的に科目ごとに各100点中60点です。ただし、平均点や合格者数などによって合格基準が下方修正されることもあります。
一部の科目のみ合格した場合は、最初に合格した試験以降最大5回まで合格した科目の試験が免除されるのが特徴です。
一度の受験では合格が難しいと感じた場合は、力を入れる科目を絞って複数回受験することで着実に資格取得に近づけます。
参照:一般財団法人 電気技術者試験センター
「第三種電気主任技術者の資格取得フロー」
「令和4年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
なお、電験三種の理論、機械の試験内容や合格点についてより詳しく知りたい人は以下の記事も読んでみてください。
受験資格
電験三種には、特別な受験資格はありません。職歴や学歴、実務経験、年齢、性別などに関係なく誰でも受験できます。自分の仕事の幅を広げてステップアップする資格としておすすめの資格です。
試験時期・試験日
電験三種の試験時期は、CBT方式が7月と2月、筆記方式が8月と3月です。CBTは25日程度の期間が設けられるため、1日ですべての科目を受験するのではなく日を分けて科目別で受験することも可能です。
2022年度から電気主任技術者の人手不足や高齢化などを解決するため、年に2回受験できるようになりました。2024年度の試験日は以下の通りです。
試験方式 | 筆記方式 | CBT方式 |
---|---|---|
上期試験 | 2024年8月18日(日) | 2024年7月4日(木)~7月28日(日) |
下期試験 | 2025年3月23日(日) | 2025年2月6日(木)~3月2日(日) |
申し込み方法および受験料
申し込みは、「一般財団法人 電気技術者試験センター」のホームページから可能です。受験料はインターネットによる申し込みが7,700円、郵便による書面申し込みが8,100円です。
原則インターネットからの申し込みとなっており、金額の差や利便性から考えてもインターネットから申し込むようにしましょう。上期と下期ともに申し込み期間が決まっているため、忘れないように注意してください。
2024年度の試験申込期間は以下の通りです。
試験方式 | 申し込み期間 |
---|---|
上期試験 | 2024年5月20日(月)~6月6日(木) |
下期試験 | 2024年11月11日(月)~11月28日(木) |
電験三種の合格率は10%前後|難易度は高め
電験三種の全科目合格率は、およそ10%前後で推移しています。科目別の合格率は15~30%程度であり、合格率からもわかるとおり電験三種の難易度は比較的高いです。
2022年度上期・下期および2023年度上期の合格率は以下の通りです。
項目 | 全体合格率 | 理論合格率 | 電力合格率 | 機械合格率 | 法規合格率 |
---|---|---|---|---|---|
2022年度上期 | 8.3% | 23.1% | 24.2% | 11.3% | 14.7% |
2022年度下期 | 15.7% | 24.6% | 20.8% | 28.4% | 18.4% |
2023年度上期 | 16.6% | 26.6% | 25.4% | 24.6% | 28.8% |
「令和 4 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
「令和 4 年度第三種電気主任技術者下期試験の結果について」
「令和 5 年度第三種電気主任技術者上期試験の結果について」
ただし、科目別の合格を重ねることで合格できるため、計画的に勉強すれば最終的に合格できる可能性は高いです。
電験三種を取得する4つのメリット
電験三種を取得するメリットとして、以下の4つがあります。
- 収入アップが見込める
- 転職や独立に有利に働く
- AIに代替されない
- 別資格の認定を受けられる
1.収入アップが見込める
電験三種を取得すると、収入がアップする可能性があります。電気主任技術者は独占業務であり、仕事の幅が広がるため手当がもらえる会社が多いです。
また、評価アップにもつながって昇進・昇給のチャンスが増えます。求人サイトに掲載されている求人情報によると、一般的な電気工事士の平均月収は約31.2万円なのに対し、電気主任技術者の平均月収は34.4万円です。
なお、電験三種の年収情報についてより詳しく知りたい人は以下の記事も読んでみてください。
2.転職や独立に有利に働く
電験三種は需要が高く、転職や独立で有利に働きます。工場やビルなどのさまざまな施設で電気設備が導入されており、現在でも非常に需要が高いです。
さらに、経済産業省の情報によると2030年頃から電気主任技術者が需要に対して約2,000人不足するといわれており、将来的なニーズの高まりも予想されます。
参照:経済産業省「電気保安人材の持続可能な確保・活用に向けた制度のあり方について」
全電協株式会社では、電験三種を取得した方を募集中です。実績豊富な電気保安法人のため、実務経験が無い有資格者の方でも実務経験を積みながら働けます。電気主任技術者として働きたいとお考えの方は、ぜひご応募ください。
3.AIに代替されない
電気主任技術者の仕事は、AIに代替されず将来性があります。電気設備は、それぞれで必要な処置や対応方法が変わります。状況に合わせて適切に対処しなければならないため、電気主任技術者なしでの保安や監督が難しいです。
事業者との交渉を行う必要もあり、コミュニケーション面から考えても電気主任技術者はAIに代替されません。
4.別資格の認定を受けられる
電験三種を取得して実務経験を積むと、別資格の認定を受けられます。認定を受けられる資格は以下の通りです。
資格 | 認定条件・内容 |
---|---|
第二種電気主任技術者 | 電圧1万ボルト以上の電気工作物の工事や保守、監督業務経験を5年以上積むことで認定を受けられる。 |
第一種電気工事士 | 同上 |
第一種・第二種電気工事士 | 電験三種を取得していると筆記試験が免除される。 |
参照:一般財団法人 電気技術者試験センター「電気工作物の範囲と資格」「第二種電気主任技術者の資格取得フロー」
電験二種は三種よりも電圧が高い電気工作物を取り扱えるようになり、電気工事士は工事もできるようになります。どちらの資格も、取得することで仕事の幅を広げられるでしょう。
電験三種は独学で合格できるが難易度は高い
電験三種は、独学でも合格できるものの、難易度が高い資格です。難易度が高い理由として、試験範囲が広く、計算問題が多い点が挙げられます。独学で合格するためには、科目合格を駆使して最終的に合格を目指す方法が現実的でしょう。
一度に4科目すべてで合格しようとすると勉強が追いつかないリスクが高いです。複数回の受験を前提に、科目ごとに集中的に合格を目指すと、独学でも効率よく資格取得を目指せます。
電験三種の試験に合格するための勉強時間の目安は、およそ1,000時間です。勉強の計画を立てて勉強を進めましょう。
基本的知識を勉強する他、過去問を解くことも有効です。過去問は「一般財団法人 電気技術者試験センター」に掲載されているため、勉強を進めながら実力を確認するために過去問を解くのもおすすめです。
なお、電験三種を独学で受験する際の学習法やコツ、勉強時間についてより詳しく知りたい人は、以下の記事もご覧ください。
電験三種を取得して仕事の幅を広げよう
電験三種は、主に電気設備の保安や監督を務めるために必要な資格です。年収アップや上位資格の取得につながるため、ステップアップの観点からもおすすめです。難易度は高いですが、できる業務が増えて仕事の幅が広がるため、取得を目指してみましょう。
全電協株式会社では、電験三種有資格者を積極的に募集しています。興味がある方は、ぜひホームページからご応募ください。