電験三種は免除制度を活用して資格取得できる
電験三種は免除制度を活用すると、試験を受けなくても資格取得が可能です。ただし免除制度を活用するには、電気事業法第44条第2項第1号の規定に基づいた条件を満たさなければなりません。
免除制度を活用できるのは電験三種だけでなく、電験二種・電験一種にも免除制度が設けられています。ただし各資格によって免除となる条件が異なるため、申請する際は注意が必要です。
電験三種の試験を免除する2つの条件
電験三種の試験を免除する条件は以下の2つです。
- 学歴
- 実務経験
それぞれの条件について詳しく解説します。
1.学歴
電験三種の試験を免除するには、以下の学歴条件を満たさなければなりません。
- 経済産業大臣が認定した学校の卒業者
- 電験三種の試験免除に必要な科目と単位
それぞれの条件について詳しく解説します。
経済産業大臣が認定した学校の卒業者
電験三種の試験を免除するには、経済産業大臣が認定した高校・高等専門学校・短期大学・大学の卒業者でなければなりません。たとえ工業系の講義を受けていたとしても、認定校を卒業していなければ試験免除の申請はできないためご注意ください。
なお認定校によっては、学部・学科ごとに経済産業省の認定を受けている場合もあります。認定を受けていない学部・学科を卒業した場合、試験免除の申請はできません。
学校ごとに資格認定に関する内容が異なるため、電話やメールなどで問い合わせましょう。令和6年3月31日時点で認定されている学校は、以下の資料より確認できます。
参照:経済産業省「電気主任技術者認定校一覧」
電験三種の試験免除に必要な科目と単位
電験三種の試験免除には認定校の卒業だけでなく、必要な科目と単位を取得していなければなりません。認定校に入学した年によって、試験免除に必要な科目と単位の条件が異なります。
また学校によっては履修科目や単位数が足りない場合もあるため、免除申請をおこなう前に確認しましょう。試験免除に必要な科目と単位は、以下の資料より確認できます。
参照:中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」
2.実務経験
電験三種の試験を免除するには、以下の実務経験の条件を満たさなければなりません。
- 電験三種の試験免除に必要な実務内容
- 電験三種の試験免除に必要な経験年数
それぞれの条件について詳しく解説します。
電験三種の試験免除に必要な実務内容
電験三種の試験免除に必要な実務内容は、電圧500ボルト以上の電気工作物の工事や運用などです。
電気工作物の具体例について以下にまとめました。
- 発電設備
- 変電設備
- 送電設備
- 配電設備
- 給電・遠隔制御等の設備
- 需要設備
なお上記の設備に在籍していても、実務として容認できない業務もあります。実務として容認できない業務の具体例は以下のとおりです。
- 電気工作物の知識・技能が必要ではない業務(土木工事や溶接工事など)
- 電気工作物の知識が必要ではない監視や記録
- 電気機械器具や計器類の製造業務
実務として容認できない業務に関する詳細は、以下の資料をご確認ください。
参照:中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」
電験三種の試験免除に必要な経験年数
電験三種の試験免除に必要な経験年数は以下のとおりです。
認定大学卒業者 | 1年以上 |
---|---|
認定短大・高等専門学校卒業者 | 2年以上 |
認定高校卒業者 | 3年以上 |
試験免除を申請する際は、勤務先による実務経歴証明書を提出しなければなりません。もし委託管理契約で業務をおこなっている場合は、契約先と委託先の証明書が必要となる場合があります。
また実務経歴証明書だけでなく、勤務先の組織図の作成も必須です。書類作成の方法については、以下の資料をご確認ください。
参照:中部近畿産業保安監督部北陸産業保安監督署「電気主任技術者免状の交付申請に必要な書類の作り方」
電験三種の免除に必要な単位が不足している場合は科目別試験で資格取得できる
電験三種の試験免除に必要な単位が不足している場合は、不足単位にあたる科目に合格すれば資格取得が可能です。
ただし試験合格により単位取得とみなされる試験科目は以下の条件に限られます。
1科目が不足している場合 | 電力・ 機械・法規のどれか |
---|---|
2科目が不足している場合 | 電力と法規もしくは機械と法規の組み合わせのみ |
たとえば理論の科目のみが不足している場合、上記の条件に当てはまらず試験合格で単位取得できないため、資格取得ができません。
また法規と機械の科目が不足している場合も、組み合わせの条件に当てはまらないため資格取得の対象外です。
もし不足している単位がどの科目に当てはまるのか不明な場合は、卒業した学校の単位取得証明書を確認しましょう。
電験三種の試験免除申請に必要な書類・手数料・送付先
電験三種の試験免除申請に必要な書類・手数料・送付先は以下のとおりです。
申請に必要な書類 | 主任技術者免状交付申請書 卒業証明書 単位取得証明書 実務経歴証明書 戸籍抄本または住民票 免状送付用宛先用紙 |
---|---|
申請にかかる手数料 | 収入印紙として6,600円 |
申請書類の送付先 | 最寄りの産業保安監督部・支部・事務所・監督署 |
申請書類の作成方法や再発行の手続きについて、以下の記事にまとめていますのでぜひ参考にしてください。
電験三種取得で免除・受験資格を得られる資格一覧
電験三種により他の資格試験が一部免除できたり、受験資格を得られたりする資格は以下のとおりです。
- 電験二種
- 電気工事士
- 建築設備士
- 消防設備点検資格者
それぞれの資格の概要について詳しく解説します。
電験二種
電験二種は、電圧17万ボルト未満の電気工作物を保守・監督ができる資格です。電験三種よりも幅広い業務が可能となり、活躍の場が広がります。
電験二種の試験免除には電験三種を取得したうえで、電圧1万ボルト以上の電気工作物の工事や運用などの実務経験が必要です。また電験三種を取得してから、5年以上の実務経験が求められます。
なお電験一種の試験免除には、電験二種の資格取得が必要です。電験三種の取得で電験一種の試験免除はできないためご注意ください。
参照:一般財団法人電気技術者試験センター「電気技術者試験のご案内」
電気工事士
電気工事士とは、電気の配線工事や保守・点検ができる資格のことです。
電験三種の資格があれば、第一種・第二種の学科試験が免除されます。技能試験は免除とならないためご注意ください。
ただし第一種電気工事士の場合は、実務経験の条件を満たせば技能試験を受けずに資格取得できます。電験三種の資格を有したうえで、電気工作物の工事・維持または運用の実務経験が5年以上必要です。
なお電気工事士の免除申請については、都道府県ごとに対応が分かれます。お住まいの地域によって必要な申請書類や提出方法が異なるため、申請前に確認しましょう。
参照:一般財団法人電気技術者試験センター
「電気技術者試験のご案内」
「都道府県庁免状窓口(電気工事士免状等担当窓口一覧)」
建築設備士
建築設備士とは、建築設備の設計・工事監理について建築士に助言できる資格のことです。電験三種を取得して2年以上の実務経験があれば、受験資格を得られます。
本来であれば、建築設備士の資格を取得するための受験資格が必要です。学歴・実務経験などの条件を満たさなければなりません。
学歴や実務経験がない方が建築設備士の受験資格を得るためには、9年以上の実務経験が必要とされています。建築設備士の受験資格や試験の詳しい概要については以下をご確認ください。
参照:建築技術教育普及センター「令和6年建築設備士試験の案内」
消防設備点検資格者
消防設備点検資格者とは、施設に設置された消防用設備等の点検を実施できる資格のことです。
電験三種の資格を取得していると、第1種・第2種・特種の受講資格を得られます。実務経験などは必要ないため、資格の免状があれば受講可能です。
ただし受講資格があるだけで講習会の参加は必須であり、修了考査(試験)の免除はないためご注意ください。
なお消防設備点検資格者は、電気工事士の資格を取得している場合も受講資格を得られます。受講資格を含む講習の概要については、以下をご確認ください。
参照: 一般財団法人日本消防設備安全センター「第1種・第2種消防設備点検資格者講習」
電験三種の試験免除できない場合の資格取得方法
電験三種の試験免除ができない場合の資格取得方法は以下の3つです。
- 科目等履修生制度を活用する
- 独学・通信講座などで勉強する
- 実務経験を積める企業に就職する
それぞれの方法について詳しく解説します。
1.科目等履修生制度を活用する
認定校を卒業しているけれど履修科目・単位が足りていない場合は、科目等履修生制度を活用しましょう。科目等履修生制度とは、大学や大学院などで特定の科目だけを履修できる制度のことです。
たとえば理論科目の単位だけが足りない場合、不足している単位にあたる講義を受けて試験に合格すれば単位を習得できます。ただし、免除申請に必要な科目区分ごとに1科目までとされているためご注意ください。
なお不足している単位を取得できるのは、卒業した学校のみです。また科目等履修生制度で取得した単位は、卒業後3年以内に取得した単位に限られます。
2.独学・通信講座などで勉強する
試験免除ができない場合は独学もしくは通信講座などを利用し、電験三種の試験を受けて資格取得を目指しましょう。電験三種は4科目の試験に合格しなければなりませんが、科目別合格制度を活用して1科目ずつ合格を目指すケースも多いです。
社会人の方で限られた時間しか勉強できなくても、通信講座などを利用すれば独学でも合格できます。以下の記事に独学での学習方法についてまとめていますので、ぜひ参考にしてください。
電験倶楽部では電験三種の試験対策イベントを実施したり、電験三種の取得を目指す仲間と交流できたりします。またコミュニティに所属すると、業界に関する情報交換も可能です。
毎週木曜日には、電験三種の試験勉強会を実施しています。電験三種の合格を目指すなら、ぜひ電験倶楽部のコミュニティにご参加ください。
3.実務経験を積める企業に就職する
認定校を卒業し必須単位を取得している場合は、実務経験が積める企業に就職すれば資格取得できます。
業界未経験でも認定校を卒業していれば、採用してくれる企業も多いです。資格取得を支援してくれるため、独学で勉強を続けるよりも働きながら電気に関する知識を学べます。
学歴に応じた実務経験を積んで、電験三種の取得を目指しましょう。
電験三種の試験免除の概要を理解し資格取得を目指そう
電験三種の試験免除を活用するには、学歴と実務経験が必要です。今回紹介した試験免除の概要を確認し、該当する方はぜひ電験三種の試験免除を申請してください。
もし電験三種の試験免除の条件に満たない場合は、科目等履修生制度を活用したり、独学で資格取得を目指せます。また認定校を卒業していれば、業界未経験でも実務経験を積める企業に就職も可能です。
電験三種の試験免除の概要を把握し、資格取得を目指しましょう。
全電協株式会社では、電気主任技術者認定校卒の方を対象とした採用をおこなっています。研修・教育サポートの体制が整っているため、業界未経験の方でも問題ありません。
電気工事に興味のある方はぜひ以下からご応募ください。