伊藤菜々さん
電気予報士・電力系youtuber
1989年2月21日、埼玉県生まれ。文系卒で金融業界から再エネ業界に転職したのが、エネルギーとの出会いのきっかけ。電力をたのしくわかりやすくをモットーに発信やセミナー、コンサル活動を行う。
本インタビューは動画でも視聴できます!
電気予報士なな子さんの今の活動
-今の電気予報士なな子さんの活動についてお話しください。
改めまして、電気予報士なな子と申します。私は電力系ユーチューバーで、電気のことをとにかく楽しくわかりやすく発信することをしています。今特に力を入れてることっていうのは二つありまして、
一つは電気やエネルギー全般の情報発信です。
電力自由化以降、業界の仕組みが変わり、あらゆる制度ができました。また最近はカーボンニュートラルという言葉もよく聞きますね。他にもロシア・ウクライナ戦争の影響で化石燃料のが高騰したことによる物価がすごい上がってるんですよ。
今までだと多分無視できたレベルと思うんですが、最近の物価高と光熱費高騰は私も驚いています。
私の家の電気代に関しても今年倍になってます。本当にびっくりしました。そんな感じでエネルギー問題ってお財布にも影響が大きくなっていてとても大事なんですけど、この問題ってすこしとっつきづらいと思いませんか?横文字とか漢字も多くて。
なのでそれを、楽しくわかりやすく解説するっていうのがまず今力を入れていることです。
二つ目は、電気主任技術者という仕事の発信です。
電気主任技術者がすごい少ないんですよ。2030年には、二種と三種合わせても2000人足りなくなるという予想があります。電気設備が増えていくじゃないですか。そもそも、あらゆるところで定年退職とかで保安する人がいないという状況になります。ますます電気の重要度が増していく状況で、この電気設備仕事って絶対必要だと思うんですよ。電力の安定供給を守るために!
なので、「電気主任技術者っていい仕事だよ」って楽しく広める活動に非常に力を入れています。
異業種の文系女子、電気業界へ!
-この活動をするきっかけと、今の活動の経緯を教えてください。
聞いてくれてありがとうございます。実は私はもともと文系で、電気には興味がなかったんですね。数学も物理もわかんない状態でした。
新卒の時は今と全然違う業種の会社に入りました。先物のディトレーダーみたいなことをしていました。
固定価格買取制度が2012年に始まって、その時に再エネに大きい補助金がついたんです。
その時に再生可能エネルギーが投資案件になり、再エネファンド入社したのがエネルギーの入り口のきっかけでした。 その後、2016年に全面自由化が始まり、誰でも好きな電力小売り会社を選べるようになりました。全面自由化をきっかけに、新電力事業を一緒にしないか?とお誘いいただき、転職をしました。
– 新電力ではどんな経験を?
立ち上げなので、営業や電気の調達、契約から全てを経験しました。営業が結構好きで、全国を回っていました。地域の特徴を見れたり、いろんな美味しいものを食べたり、旅行が好きだったので楽しかったですね!
そんな中、地域内で経済を循環させる為に地域新電力の立ち上げが流行りました。新電力の経験を活かした電力コンサルの仕事はこれから増えると思って、五年前に独立しました。
– 契約解除から独立までの道。
しかし、新電力業界の状況が不安定になり、自由化のデメリットが出てきました。
その時に、もうこの仕事はできないと思ったんです。お客さまの倒産・事業撤退や顧問契約解除など、色々経験しました。
それでも、電気の仕事は好きで、続けたいと思いました。今まで私がいたのは小売の部分だけだったのですが、電気って発電~送配電、需要家まで全部繋がってるから、技術的なことや制度のことまで含めて全て理解することが重要だと気づきました。 いろんな制度を知るうちに、広範囲で難しく、とっつきにくいと感じ、それを楽しくわかりやすく発信しようとしました。
YouTubeで業界の注目を集める
-電力系のユーチューバーとして今非常に注目されていますが、ユーチューブの活動開始時のお話を聞かせてください。
ユーチューブを始めた頃、私は電力系ユーチューバーなのでいろんな発電所や企業への取材とか行きたいですよね。
当時は、視察の申し入れを入れても知名度のないユーチューバーって結構断られてたんです。しかし、少しずつチャンネル登録増え、電気新聞さんなどのメディアに取り上げてもらったりしていく中で、少しずつ受け入れてくれる所が増えてきたんですが、最初は大変でしたね。
苦悩の日々。そして第二の人生のクラウチングスタート
-良い意味で、SNSのなな子さんとのギャップが聞けて驚きました。
独立前から今に至り、様々な苦労を重ねてきてますが、なぜそんなに明るいのか教えてください。
新電力会社にいた頃は、組織が大きくなっていく中で、立ち回りや部署間での調整などわからないことも多く、思い通りにいかないこともありました。また先ほどの通り、独立してから契約解除や、職場でなかなか思うようにいかないことばかりで、本当につらい時期が多かったです。
視聴者さまや、応援してくださる方のおかげで今YouTubeでは明るく面白く発信できていますが、過去には実は人生もうやめちゃおうかと思うくらいのことも沢山ありました。
だけど、幸い、いろんな人の支えがあって乗り越えることができて、ラッキーだったと思います。だったら、今の人生ってもしかしたら第二の人生のスタートなんじゃないかなって。ポジティブに考えて当たって砕けろくらいの精神で
「私にできることは全力でやりたい。」って本気で思っています。同じような思いをする人をもう増やしたくないので、 実はこれが私の明るさとか原動力なのかもしれません。
電験三種GETだぜ!
-電験3種を取得されたと聞きましたが、なぜ難易度の高いこの資格を取ろうと思ったかをお聞かせください。
今は発電事業者さんや送配電のところまで足を使って見に行って知らなかったことを知り、理解を少しでも深めていく活動を続けていますが、、電気の小売をしている当時は、お客さんに「停電したらどうすればいいですか?」と聞かれても、「一般送配電事業者さん(東京なら東京電力パワーグリッド)に電話してください」と答えていました。しかし、それは違うと思いました。
ちゃんとお客さんに向き合って、電気のことを自分で責任をもってしっかりとアドバイスしないといけないと思いました。その頃です。電気の技術者や専門家ってなんだろう?
と思い、なにを始めたらいいかと調べていたら電検3種・電気主任技術者が主要な資格なのだと知りました。
それが電気主任技術者という仕事との出会いでした。
実は父も電気主任技術者として個人事業主で働いています。働き方もとても良いです。自分でスケジュールを決め、仕事の量も契約先の数を自分で調整することである程度の裁量が効きます。
給与もしっかり稼げます。小さい頃から父は夕方には帰ってきて、一緒にご飯を食べ、旅行にも連れて行ってくれました。
そして、現場でトラブルがあったときは、夜中でも現場に駆け付け、お客様の電力供給を守っている姿がすごくカッコイイと思いました。 これを仕事にしたいと思い、電検3種を取得しました。
電気主任技術者の魅力を語る
-電気主任技術者の魅力をなな子さんの目線でお伝えください。
何時間でも語れます(笑)
一つ目は国家資格の専門職ということ。どういう資格と並べるかっていうと弁護士とかお医者さんとか税理士さんとかも。
そういう並びなわけですよね。だから昔は電気主任技術者って「先生」って呼ばれてたんですよ。専門職で国に認められてる絶対必要な仕事だよってことですね。なんでまあ当然試験も難しいし感電する危険もあるわけです。
こういった状況で、技術と知識を持って安全を守るという誇りを持てる職種だと思います。
二つ目は、今非常に職業として風が吹いてる点です。まず国家資格で絶対にはくならない仕事です。
更に人口減少で高齢の方が引退される中で、これから世の中は電化していきます。ガスなどの設備も電気に変わってきます。
太陽光の発電設備も増えてますし、大型蓄電池などの保守にも電気主任技術者が必要なんです。なので引く手数多なわけですね!
もう職業を悩んだらもう電気主任技術者!「電気主任技術者しか勝たん」みたいなわけですよねwもう取って業界入ったら勝ちです。
三つ目は。特に女性の方だったりとかプライベートを重視する方におすすめです。
様々な働き方を作れる!ということですね。
電源三種を取って、基本的には五年間実務経験が必要になりますが、研修を受けると三年に縮められます。
今年度からは条件付きで二年の実務経験で、お客さんと契約を直接結べるようになります。
つまり一人前になれますよというとこです。その状態になると、法人に入ってもよし、個人事業主として独立すると時短で仕事するもよしです。 企業に入って電気主任技術者という肩書きだけで資格手当がもらえちゃったり、会社の中でも一目置かれたりいろんな働き方を作ることができるわけです。
文系女子、超高齢化の電気保安業界で仲間創りを開始!
-今後はどのように情報を届けていくかお聞かせください。
電気主任技術者は今、非常に少なく、不足しています。2030年にはさらに2000人足りなくなると予測されています。高齢化が進んでるのに電気設備は増えていくので、電力って生活に必ず必要なインフラな為この問題は深刻です。その中で私は電気主任技術者としての魅力を伝え、一緒に活動する仲間を増やすことに力を入れています。
文系のチャランポランっぽい私みたいな子でも電検3種の資格取れるんだ!っと思ってもらい勇気持ってほしいんです。でも、ただ電検3種の資格を取っただけダメで、ちゃんと自分で点検しようと!身をもって発信っていうのは大事だと思ってますし、 体を張ってじゃないですけど地に足つけて情報を届けていきたいです。
夢 -What is your dream-
-電気予報士なな子の夢をおしえて下さい。
「エネルギーが大事なんだよ」っていうことを、電力業界外の一般の方にも広めるていくことです。
ただ私が好きだからエネルギーを押し売りしているのではなくて、今後エネルギーはみんなが知っておかなくてはならないことなんです。
電気は、昔は使う人に合わせて火力発電を調整してました。
今は再生可能エネルギーが増え、需要があるかないかに関わらず勝手に発電するので、使う側が合わせなきゃいけない時代なんです。
なので、これからは電気を使うみんなにエネルギーのリテラシーが必要なんです。
今物価が高いって感じませんか?物買う値段上がってるんですよ。うまい棒も値上げですよ(笑)実はこれ、エネルギーが高いのが1つの理由なんです。単純に電気代が高いだけでなく、企業のコストや物価高など、ほぼ全てにおいてエネルギー問題って非常に重要なんですね。
でもやっぱ難しいし、非常にとっつきづらいです。だから楽しくわかりやすくみんなにエネルギーの大切さを知ってもらい日本良くしていこうよっていうのが今私が思ってることです。
情報の伝え方も、もっと面白くって思うんですね。
なので、まず私が様々な場所に足を運んで、業界を本当楽しく面白くしたいなっていうのが今の夢ですね なな子さん最高です!本日はありがとうございました。
文:山口 雄輝
写真:森島 哲
取材協力先
低酸素トレーニング施設「RUN BLUE TOKYO」
ウエアやシューズなど必要なものは全て完備。 有名スポーツ選手も通う東京都千代田区・麹町の低酸素トレーニング施設。