齊藤 弘幸
一般社団法人 日本電気協会 事業推進部 主任
1985年11月17日生まれ。大学電気工学科卒業後(一社)日本電気協会へ入社、技術系職員として電気主任技術者のバイブル「自家用電気工作物保安管理規程」の改定作業等に従事、現在は、電気業界の各団体が協力しもっと電気を身近に感じてもらいたいと始めたウェブメディアWattMagazine(ワットマガジン)の運営を行う。
電気の道へ進むきっかけ
ー まずは齊藤さんのこれまでの経歴や学生時代のことをお聞かせください。
私はもともと、両親が全く電気業界とは関係ない職業だったんです。
父は公務員、母は銀行員でした。全く電気業界とは関係ない仕事でした。
電気業界の方は割と親族に電気業界で働いている方が多いのですが、私の場合は全く関係ないところから電気業界に入りました。
高校も普通科で、全く電気とは関係ないんですけれども、その中で理系の科目が得意でした。
特に物理の電磁気学の成績が良かったので、これは電気の道に進んではどうかなと考えました。また、電力会社さんや電機メーカーさん、そして電気自動車もこれから時代の波が来るのではないかと思い大学では電気工学科に進みました。
そして、卒業時に大学の求人票で今の日本電気協会を知り、「原子力発電所の設備から一般家庭用の電気製品」まで「電気」に関するものに幅広く関わることができるとの説明を聞き興味を持ち、働き始める決意をしました。
本インタビューは動画でも視聴できます!
電気業界に特化した就職支援サイト「ワットマガジン」
ー ワットマガジンというメディアを立ち上げることになった経緯は?
もともと経済産業省の調査で、電気工事や電気保安業界は一般的な認知度が低い※という結果が出ました。
そこで、電気業界の各団体で協力し「電気保安・電気工事業界の認知度向上・入職促進に向けた協議会」を設立し、特に若い方がウェブを利用することが多いということで、ウェブメディアのワットマガジンを立ち上げました。
※参照:経済産業省 産業保安グループ 電力安全課 平成30年3月12日「電気保安人材の中長期的な確保に 向けた課題と対応の方向性について」資料5_P15
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/hoan_shohi/denryoku_anzen/pdf/016_05_00.pdf
ー ワットマガジンはスタート当初と比べて何が変わりましたか
最初は電気と全く関係ない記事を扱い、若い人に人気のあるキーワードで検索エンジンから入ってもらおうとしました。
例えば、当時筋トレが人気で、ワットマガジンの筋トレ記事が検索エンジンで上位に入ることができていました。そして流入も取れていたわけです。
でも、当たり前ですが電気と筋トレって全く関係ないですよね。そのため、せっかく筋トレ記事を見ていただいても、ワットマガジン内の電気業界の仕事を紹介した記事への回遊はないということが分かってきました。
また、当時のワットマガジンは電気に全く興味が無い人をターゲットとしていたため、電気感を全然出していなかったと思います。そのため、これを続けていって本当に電気業界への就職者の増加に繋がるのか?という疑問もでてきました。
そこで、電気に少しでも興味をもっている人をメインターゲットとして、電気業界感を前面に出しアイキャッチも「電気業界の就職支援サイト」と変更しました。さらに、高校の先生や高校生に就活時にどんなことが知りたいか実際に話を伺うと、求人票ではわからない現場の実態が知りたいとの声をうけ、今は電気の現場を伝えようということでウェブだけでの戦いで無く、色々と取材に行って実際に関係者の方に取材したりとか電気工事の方に取材したりと電気関係の専門性が高い記事にシフトしています。
ー 運営をしていく中でのターゲットやトレンドの変化ついて教えてください。
当初は高校生に向けて記事を提供しようとしましたが、彼らは直接ウェブサイトに来ることが少ないことが分かりました。
そこで、工業高校の先生方との連携や、全国の工業高校にチラシを配布するなどの取り組みをしています。
地道な動きですが今はこういった活動をワットマガジンは大切にしています。
ー 今ワットマガジンで人気の記事は何ですか?
記事に関しても、当初では考えられなかった人気記事があります。
それはヘアドライヤーの構造や仕組みについての記事です(笑)
これは専門性が高く評価されているため、安定して人気があります。
ヘアドライヤーというと結構幅広い方に見ていただけるんじゃないかなということで期待感をもって記事を作ったのがうまくハマりました。
そうだからといって、業界の情報を出したらそれは全然見られなかったり…
日々、試行錯誤しながら記事の企画を考えているのですが、何が当たるのかなってわからなくてですね(苦笑)
電気主任技術者のしごと
ー 電気主任技術者の資格「電験三種」がすごく難しいと聞いたのですが…
そうなんです。電験三種の合格率は10%程度とかなり低いため、資格を持っていることが大きな強みになります。
しかし、昨年からちょっとやり方を変えて、最近ではCBT :Computer Based Testing (コンピュータ・ベースト・テスティング)方式を導入し、合格率も少し上がっています。
CBT方式とは、紙と鉛筆を用いて試験を行うのではなく、コンピュータ上で試験を行う方法で、直近の試験の合格率は約20%のようです。
ちなみに私も電検三種試験で取ってるんですよ!ですが、今の仕事では実務経験を積むことができないのでペーパードライバー的なアレですが(笑)
ー 電気主任技術者の魅力を業界人の目線で教えて下さい。
まず電気主任技術者はビルや工場毎に必ず必要な仕事で、安定性が魅力です。
更に、給料が良く、個人で独立するとプライベートの時間も調整しやすいです。
しっかり稼ぎたい方は多くの仕事をこなして高収入を得ることができますし、プライベートを重視したい方は仕事をセーブすることも可能です。
実際に現場サイドのお話を聞いても、「給料がいいです」と。これは大事なことだと思います。
そして結構個人で独立された方なんかだと割とプライベートライフワークバランスとかを重視される方多いです。
プライベートを重視したい時は仕事を軽めにしたり、もうしっかり稼ぐぞという方は年収どんどん上げるために仕事をバンバン入れて稼ぐということもできるというのが魅力かなと思います。
自分でバランスを取れるようなプチ独立みたいなそういう感じですよね。
ただ、こういう情報こそ埋もれているんですよね。
聞く限り、実際に入ったらどれぐらいもらえるのかなっていうのを結構学生の皆さんも気にするので、ワットマガジンがこういった内容を露出していく必要があります。
ただ、給料って企業によっても異なるので、平均値的なものしか出せないという難しさがあります。そのため、実は電気業界は仕事が安定していて給料がいい会社が沢山あるのですが、その情報発信は個社の採用担当の方にお願いするしかない状況です。
ー 最後に、今後のワットマガジンの取り組みについて教えてください。
最終的には、ワットマガジンを通じて電気業界に興味を持った方が就職に繋がることを目指しています。
まずはワットマガジンの認知度を上げて、電気業界に興味を持った方がまず見るサイトになることを目指しています。
編集後記
電気保安業界の問題とそれに対するアプローチが一筋縄ではいかずとも、業界のキーマンと状況を打破しようと継続して試行錯誤を続けているワットマガジンさんの背中に電気主任技術者という職業の未来を感じました!
WattMagazine(ワットマガジン)
ウェブサイト:https://www.watt-mag.jp
公式X:https://twitter.com/WattMagazine_JP
文・撮影:山口 雄輝
取材協力:市原ぞうの国・サユリワールド