電気設備のVCB(真空遮断器)とは?特徴や役割・LBSとの違いについて解説

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「電気設備のVCBについて詳しく知りたい」
「VCBにはどのような役割があるのだろうか」
「VCBの更新推奨時期はいつぐらい?」

上記のような疑問を抱えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

VCB(Vacuum Circuit Breaker:真空遮断器)とは、短絡事故や地絡事故が発生した際に、異常電流を遮断する装置のことです。電気事故を防止する役割を担い、高圧受変電設備のほとんどにVCBが使用されています。

しかし異常電流の検知ができない欠点があり、異常電流の発生を知らせる装置をセットで取りつける作業が必要です。

本記事では、VCBの概要と特徴や役割について解説します。LBS(Load Break Switch:高圧交流負荷開閉器)との違いについても解説するので、VCBについて詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。

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    電気設備のVCB(真空遮断器)とは

    引用元:キュービクル必殺工事人「VCB交換工事

    VCB(Vacuum Circuit Breaker:真空遮断器)とは、短絡事故や地絡事故が発生した際に、異常電流を遮断する機器のことです。真空バルブを採用した遮断器を指します。

    電力系統および需要家構内の回路の保護を目的として、配電用変電所や需要家構内に設置されるキュービクル内に収納されている装置です。

    キュービクルとは、受電設備を収めた金属製の箱のことです。発電所から変電所を通して送られる6,600Vの電気を100Vや200Vに降圧する役割があります。

    VCBは高圧受変電設備における受電盤や配電盤など、大きめの設備に使用されていることが多いです。現在は、高圧受変電設備のほとんどにVCBが使用されています。

    事故発生時の被害拡大を防ぐためにも、VCBへの理解を深め、適切に設置して取り扱うことが重要です。

    VCB(真空遮断器)の特徴|遮断能力の高さ

    VCB(真空遮断器)の特徴は、遮断能力の高さです。電路を遮断する装置には遮断器以外にも開閉器や断路器がありますが、遮断能力はVCBがもっとも優れています。

    電流には種類があり、開閉器と断路器が遮断できる種類は以下のように限られます。

    • 開閉器:負荷電流の流れている電路の遮断
    • 断路器:負荷電流の流れていない電路の遮断

    一方で、VCBは基本的にどちらの電路も遮断可能で、さらに短絡電流等の、負荷電流よりも大きな異常電流を遮断することもできます。

    しかし異常電流の検出ができない欠点があるため、異常電流の発生を知らせる装置をセットで取りつける必要があります。

    VCB(真空遮断器)の役割

    VCB(真空遮断器)の役割は以下のとおりです。

    • 電気事故の防止
    • 負荷電流の遮断

    VCBの役割を正確に把握しておきましょう。

    電気事故の防止

    VCB(真空遮断器)には以下のような電気事故を防ぐ役割があります。

    短絡事故電気回路において、予定外の大電流が流れ人体や建物に被害を与えてしまう事故
    地絡事故ケーブルの劣化などにより大地との間に電気が流れて感電や火災を引き起こす事故

    VCBは、短絡電流と地絡電流の両方を遮断できる装置です。遮断能力が高く安全といえます。

    しかしVCBには、異常電流の検出機能が備わっていません。VCBを機能させるためには、異常電流を検出する継電器をセットで取りつける必要があります。

    継電器が事故電流を検出して信号を送ると、VCB(真空遮断器)が自動で作動する仕組みです。単体では作動できないことに注意しましょう。

    負荷電流の遮断

    VCB(真空遮断器)は負荷電流を遮断可能です。負荷電流とは、電気回路において負荷に供給している電流のことを指します。

    たとえば、以下のような電気を消費する機器のことを電気回路では負荷として扱っています。

    • エアコン
    • 電灯
    • テレビ

    負荷電流は DS(Disconnecting Switch:断路器)では遮断できません。断路器とは、電源を回路から切り離すスイッチの一種です。保守点検や修理を実施する際に、確実に無電圧状態にすることで、感電などの事故を防げます。

    負荷電流が流れた状態で断路器によって開放するとアーク放電が発生します。アーク放電とは低電圧・高電流の際に発生する放電のことです。

    アーク放電は、高温の爆風を引き起こします。火災や圧力波を発生させたり、溶融金属の破片が空中を舞ったりする可能性があるため、非常に危険です。

    VCBは、真空の密閉された部品(真空バルブ)の中に接点があるため、アーク放電を消弧できます。VCBなら、安全に負荷電流を遮断可能です。

    VCB(真空遮断器)を設置する際に組み合わせる機器

    VCB(真空遮断器)を設置する際に組み合わせる以下の機器について解説します。

    • OCR(過電流継電器)
    • GR(高圧地絡継電器)

    VCB単体では、異常電流の検出ができません。異常電流が発生したことを知らせる機器と組み合わせて取りつける必要があります。

    OCR(過電流継電器)

    OCR(Overcurrent Relay:過電流継電器)とは、電流の大きさが設定値以上になると動作する継電器のことです。高圧電路のショートや過負荷による過電流が原因で作動します。

    電気設備に規定以上の電流が発生した場合、発熱により電路や機器が故障する可能性が高いです。想定以上の電力が継続して発生しないように、高圧受変電設備ではOCRを用いて電路を保護します。

    また過電流継電器には、以下の2つの動作要素があります。

    瞬時要素瞬間的に大きな電流が流れると時間をかけずに遮断する
    限時要素過負荷電流が大きくなるほど遮断時間が早くなる

    電気がショートした場合や使い過ぎの状態を検出し、電流が整定値を超えた場合に動作する装置です。真空遮断器へ異常電流を遮断する信号を送る役割を担います。

    GR(高圧地絡継電器)

    GR(Ground Relay:地絡継電器)とは、想定した以上の地絡電流が流れた場合に動作する機器です。地絡事故とは、ケーブルの劣化などにより大地との間に電気が流れて感電や火災を引き起こす事故のことを指します。

    劣化だけでなく、ネズミなどの小動物がケーブルをかじったことで起こる可能性もある電気事故です。

    地絡事故をいち早く検出して電力回路を切り離さなければ、広範囲で長時間の停電事故など、大規模な波及事故につながりかねません。

    GRは地絡事故を検出して、波及事故を防ぐために真空遮断器へ回路を遮断する信号を送ります。

    VCB(真空遮断器)の構造

    引用元:株式会社長谷川電気「施工実績

    VCB(真空遮断器)は、高真空の絶縁容器に電極を収めた構造です。高真空の優れた絶縁耐力と、消弧能力を利用して電流を遮断します。

    アーク放電が発生しても、真空の中では拡散して形を保てないため、消滅させられる仕組みです。電気回路を遮断するには、接点同士を切り離す必要があります。

    電気が通るには、鉄や銅などの媒体が必要ですが、真空の中には媒体がありません。真空の中では電気が通らないため、アーク放電の発生を防止できます。

    またVCBには、上に設置される稼働電極と下に設置される固定電極が設置されています。真空バルブは筒状で、中は真空の密閉状態です。真空バルブ内で、アーク放電を真空中に拡散して消滅させる構造です。

    VCB(真空遮断器)の引き外し方式

    VCB(真空遮断器)の引き外し方式は以下のとおりです。

    • 電流引き外し方式
    • 電圧引き外し方式

    引き外しとは遮断器の開放機構を作動させ、負荷電流を遮断するための動作を実施することです。

    電流引き外し方式

    電流引き外し方式とは、継電器で事故を検出した場合、事故電流を使って引き外しを実施する方式です。継電器の内部接点に切り替え、遮断器のトリップコイル回路に電流を流し込んで引き外します。

    トリップコイルとは遮断器の接点を開いて遮断させるための引外し装置のことです。電流引き外し方式には、以下の特徴があります。

    • 設備コストが安い
    • 動作の確実性に欠ける
    • 信頼性に欠ける

    設備コストは安いですが、事故電流を引外し電源として使用しているため、動作が不安定な点がデメリットです。事故が発生した際の、急激な電流値の変化に対応できないため、信頼性に欠けます。

    比較的小規模な施設に採用されている方式です。

    電圧引き外し方式

    電圧引き外し方式とは、引き外し電源に別の制御電源を用いる方式です。一般的には、コンデンサや整流器、蓄電池などの直流電源を制御電源として活用しています。

    電圧引き外し方式の特徴は以下のとおりです。

    • 動作が安定している
    • 安定性が高い
    • 設備コストが高い

    引き外しが別電源のため、動作が確実で安定性があります。しかし設備コストが高いため、比較的大規模な施設で導入されることが多い方式です。

    VCB(真空遮断器)とLBS(高圧交流負荷開閉器)の違い

    引用元:富士電機

    VCB(Vacuum Circuit Breaker:真空遮断器)とLBS(Load Break Switch:高圧交流負荷開閉器)の違いは、短絡電流の遮断能力の有無です。VCBは短絡電流を遮断できますが、LBSはできません。

    LBSは、負荷電流の開閉に対応している機器です。変圧器やコンデンサなどの高圧機器・回路の開閉を目的として取りつけます。VCBは、負荷電流の開閉と短絡電流の遮断のどちらにも対応している装置です。開閉器の上位互換といえます。

    しかし、遮断器は開閉器に比べて設備コストが高くなる傾向にあります。費用対効果を考えてどちらを取りつけるかを考えることが大切です。

    VCB(真空遮断器)が原因で発生した事故例

    引用元:株式会社吉本電業社「施工実績

    雨風や湿気などにより、ビルの屋上に設置していたVCB(真空遮断器)が短絡事故を起こした例を紹介します。

    短絡事故が発生したVCBが収納されたキュービクルは、設置してから10年以上経っていました。キュービクルはゲタ基礎の上に設置されており、基礎の両側が塞がれていない状況になっていたとのことです。

    キュービクル内を見ると、サビがついていたりVCB上部に水滴が垂れた痕跡が見つかったりしています。上記の理由から、経年劣化と設置環境が原因で短絡事故が起こったとされました。

    ゲタ基礎の下からキュービクル内に雨風や湿気が入り、VCBが絶縁低下して短絡事故を起こした事例です

    設置環境によって、経年劣化が早く進行する可能性があります。とくに屋外に設置されているVCBに関しては、定期的な点検が必要といえます。設置から一定の年数が経過している場合は、早めに点検して修理・交換をすることが大切です。

    VCB(真空遮断器)の更新推奨時期は約20年

    引用元:キュービクル必殺工事人「VCB交換工事

    VCB(真空遮断器)の耐用年数は約20年です。しかし前述した事例のように使用環境や使用条件によって、絶縁劣化や部品劣化が進行して寿命が短くなる可能性があります。

    万が一故障による事故が発生した場合、長時間の停電などの波及事故につながる恐れがあるため、注意が必要です。更新推奨時期を過ぎたVCBの使用は極力避けましょう。

    その機器が原因で波及事故が発生した場合、電気主任技術者と施主は責任を問われる可能性が高いです。電気主任技術者は、VCBの更新推奨時期を過ぎていることを施主に告げる義務があります。

    告げていなかった際は、すべての責任を取らされることになりかねないため、注意が必要です。損害賠償を請求されるケースも珍しくありません。

    使用しているVCBが安全な状態にあるのか、常に把握するためにも、定期的な点検や修理・交換を実施する必要があります。

    参照:MITSUBISHI「三菱高圧真空遮断器〈更新のおすすめ〉

    VCB(真空遮断器)の役割や構造を理解して仕事に活かそう

    VCB(Vacuum Circuit Breaker:真空遮断器)とは、短絡事故や地絡事故が発生した際に、異常電流を遮断する機器のことです。真空バルブを採用した遮断器で、電力系統および需要家構内の回路の保護を目的として配電用変電所や需要家構内に設置されるキュービクル内に収納されています。

    VCB(真空遮断器)は電気設備の中でも以下の役割を担います。

    • 電気事故の防止
    • 負荷電流の遮断

    故障による事故が発生した場合、長時間の停電などの波及事故につながる恐れがあるため、定期的な点検が必要です。VCBの概要や役割を把握して、これからの業務に活かしてください。

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