電気設備のPAS(柱上気中負荷開閉器)とは?役割や交換時期について解説

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「電気設備のPAS(柱上気中負荷開閉器)について知りたい」
「PASにはどのような役割があるのだろうか」
「PASはどのくらいの期間で交換すればいいの?」

上記のような疑問を抱えている方がいらっしゃるのではないでしょうか。

PAS(Pole mounted Air Switch:柱上気中負荷開閉器)とは、電気設備の一つで柱上気中負荷開閉器のことです。電柱の上の部分に取り付けられている、架空引込方式の開閉器を指します。

PASを取りつけることで、電気関係の事故が起こった際に波及事故の発生を防止可能です。

屋外に取り付けられており、常に風雨や紫外線にさらされているため、経年劣化が進みやすい設備でもあります。経年劣化が進むと、事故が起こった際にPASが正常に動かない可能性が高まります。

経年劣化による波及事故を防ぐためには、定期的な点検を実施しなければなりません。

そこで本記事では、電気設備のPASの概要について解説します。役割や交換時期についても解説しているので、PASについて詳しく知りたい方はぜひ最後までお読みください。

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    PAS(柱上気中負荷開閉器)とは

    PAS(Pole mounted Air Switch)とは、高圧受電をしている建物や施設での波及事故を防止するための装置のことです。電柱の頂上近くに取り付けられている架空引込方式の開閉器を指します。

    架空配電線(電力会社により電柱から電気を供給してもらう線)を使用している施設に取り付けられています。PASを備えつけることで、電気関連の事故が発生した際に、波及事故の発生を防止可能です。

    波及事故とは、工場やビルなどに取り付けられている電気設備の故障が原因で、近隣の電気機器にも影響を及ぼすことです。長時間の停電を引き起こす場合もあるため、事前に対策をする必要があります。

    PASを取り付けている建物や施設は、電気関連のトラブルへの対策が講じられているため、安心感が高いです。

    PAS(柱上気中負荷開閉器)の役割

    PASの役割は電気設備の停電点検時などに開閉して構内を停電させるほか、以下のとおりです。

    • 波及事故の防止
    • 地絡事故等の保護

    PASの正しい役割を把握しておきましょう。

    波及事故の防止

    PAS(柱上気中負荷開閉器)には、波及事故を防ぐ役割があります。波及事故とは、特定の場所で起きた電気事故が原因で、近隣やその地域の電気機器にも停電などの影響を及ぼすことです。

    一つの施設のトラブルが原因で起こる広範囲の停電などの波及事故は、主遮断装置の電源側で起こっているといわれています。

    波及事故の9割以上は電力会社の電源回路ではなく、電線から電力を供給している施設や建物側が原因です。電力を供給している施設からの大規模な波及事故を防ぐのが、PASを備えつける理由の一つといえます。

    PASは、電気機器がショートしたり地絡・漏電が発生したりした際に、電気の流れを切り離してくれる装置です。他の施設に事故が拡大するのを防ぐ役割を受け持ちます。

    地絡事故等の保護

    PAS(柱上気中負荷開閉器)の役割の一つに地絡事故の保護があります。地絡事故とは、ケーブルの劣化などにより大地との間に電気が流れて、感電や火災を引き起こす事故のことです。

    劣化だけでなく、ネズミなどの小動物がケーブルをかじることで起こる可能性もあります。PASを備え付けていれば、一つの施設の中でショートや漏電が起きた際の停電範囲を施設内に限定する事が可能です。

    広範囲の停電などの電気事故は、地絡事故によるものが多いとされています。そのため、地絡を検出できるGR付PAS(地絡継電装置付 高圧柱上気中負荷開閉器)の取り付けが勧められています。

    GR(地絡継電器)については、のちほど詳しく解説します。

    PAS(柱上気中負荷開閉器)に付属するSOG制御装置とは

    SOGとは「Storage Over Current Ground」の略で、PASに付属する制御装置のことです。電気機器のショートや地絡が発生した際に、PASを開放して、波及事故を防止できます。

    高圧の電気を受け取る機器の責任分界点に、PASとセットで付属している装置です。電気機器の責任分界点とは「利用者と電力会社の責任の範囲を分けるときの点」のことを指します。

    PASは開閉器であるため、トラブルを検出しても稼働しません。電気事故の発生をPASに知らせるシステムが必要です。

    電気機器の問題を察知して、PASを開けるか閉めるかを判断する役割を担うのがSOG動作機能です。事故の影響で多大な電気が流れたことを察知したり、再送電のときのトラブルを検出したりします。

    SOG制御装置の2つの性質

    SOG制御装置がもっている2つの性質は、以下のとおりです。

    • SO(蓄勢過電流)
    • GR(地絡継電器)

    電気機器のトラブルを察知して、PASを開けるか閉めるかを判断します。

    SO(蓄勢過電流)

    SO(Storage Over Current:蓄勢過電流)とは、建物内で電気がショートするトラブルが発生し、PASに多大な電流が流れたときに稼働する機能です。SOは以下のように作動します。

    1. 短絡事故を検出して遮断する準備をする
    2. 電力会社の配電用遮断器が短絡事故を検出して、遮断する
    3. 電流が流れなくなったため、遮断する準備していたPASを開放する
    4. 短絡事故が発生した施設のPASが開放された為、事故原因が配電線から切り離される
    5. 再び電気を流しても遮断されることなく、近隣の電力は復旧する

    PASは遮断器ではないため、たくさんの電流を遮断できません。SOが稼働しない場合、PASが投入されたままとなるため、電力会社の配電用遮断器を閉じても繰り返し短絡事故を検出し、近隣すべてが停電する波及事故が起きる可能性が高まります。

    GR(地絡継電器)

    GR(Ground Relay:地絡継電器)とは、想定した以上の地絡電流が流れた場合に稼働する装置です。GRが作動すれば、電力会社の配電用遮断器が地絡事故を防止して遮断する前に、PASを遮断できます。

    電力会社の地絡継電器のみだと、停電範囲が広がるだけでなく、トラブルの発生から事故点の特定や対処までに時間がかかり、被害が広がる可能性があります。

    GRは事故が起こった際にいち早く地絡事故を検出して開閉器を切り、地域停電などの波及事故を防止可能です。万が一の事故でも被害を最小限に抑えられます。

    PAS(柱上気中負荷開閉器)を設置していない場合に起こりえる事故

    PAS(柱上気中負荷開閉器)を備え付けていないと、波及事故に発展する可能性が高まります。高圧ケーブルがショートしたり地絡事故が起こったりした際に、電力会社の配電線から事故原因を切り離せないためです。

    PASが取り付けられていない施設で短絡事故や地絡・漏電が発生した場合、電気の流れを切り離せません。万が一自社設備が原因による波及事故が発生したケースでは、被害を受けた近隣施設から賠償請求される可能性があります。

    PASを未設置の事業所や施設には取り付けを勧めることが望ましいです。

    PAS(柱上気中負荷開閉器)が経年劣化すると事故が起こる危険性がある

    PAS(柱上気中負荷開閉器)を設置したあとは、経年劣化による事故が起こる可能性があります。PASは電柱の頂上付近や屋根などの屋外に設置されており、常に雨風や紫外線の影響を受けるためです。

    湿気や雨水などでサビが発生しやすく、サビた箇所に穴が空いてしまい、雨水が浸入して絶縁不良を起こす可能性があります。経年劣化が進むと、トラブルが起きてもPASが正常に動かず、波及事故を防げません。

    屋外に設置されており、経年劣化が進みやすい設備でもあるため、定期的な点検が必要です。

    PAS(柱上気中負荷開閉器)の交換時期は10〜15年

    PAS(柱上気中負荷開閉器)の交換時期は取り付けてから10~15年が目安です。必ずしも交換しなければならないわけではありませんが、取り付けから10年以上経っている場合は、点検を徹底する必要があります。

    10年を超えると事故の発生が増加する傾向にあるためです。保安規程に基づく停電点検を定期的に(毎年〜3年に1回)行い、PASが正常に作動するかどうかを確認しましょう。

    万が一の事故が発生した際に、波及事故を起こさないように適切な管理が必要です。

    参照:関東東北産業保安監督部「PAS(負荷開閉器)の設置・更新のお願い

    PAS(柱上気中負荷開閉器)の故障による事故例

    PAS(柱上気中負荷開閉器)の故障による以下の2パターンの事故例を紹介します。

    • 落雷による波及事故
    • 外箱の腐食による波及事故

    事故例を把握して、同様の事故が起きないように対策を行いましょう。

    落雷による波及事故

    一つ目の事例として、落雷による波及事故を紹介します。ある事業所で停電が発生したため、原因を調べると事業所の電気機器に異常はありませんでした。

    さらに調査すると、停電の原因はPASが爆発して配電線が短絡し、波及事故につながったと判明しています

    事故が起きた原因は、当日の落雷によって配電線に発生した異常電圧がPASに伝播し、PASまたはPAS周辺の回路に避雷器が設置されていなかったためです。PASが異常電圧に耐え切れず爆発したと推定されます。

    落雷による事故を防ぐためには、PAS内またはPAS周辺の回路に、落雷などによる異常電圧を大地へ逃がすための機器である避雷器(LA)を設置する必要があります。

    現在は避雷器(LA)内蔵のPASが製造されていますので、そちらを設置するのがおすすめです。

    外箱の腐食による波及事故

    二つ目の事例として、PASを覆っている外箱の腐食が原因で発生した波及事故を紹介します。事業所の電気工作物が原因で起こった波及事故は、PASの電源側が絶縁破壊したことにより発生しています。

    絶縁破壊によって破損したPASは、外箱が腐食しており亀裂が入っていました。外箱の底にあるボルトなども腐食しており、内部は湿気や雨風によるサビが確認されています。

    事故が起こった事業所は温泉地でした。硫黄を含むガスにPASがさらされたことで、外箱の腐食が早く進行したと推測されています。

    設置する場所によっても経年劣化の進行速度が変化します。本来であればステンレス製の外箱を採用したり、定期的な点検をしたりなどの対策が必要だった事例です。

    腐食による波及事故を起こさないためには、外部環境を踏まえて経年劣化や腐食の進み具合を考慮し、定期的な点検を実施することが重要です。

    PAS(柱上気中負荷開閉器)とUGS(地中線用負荷開閉器)との違い

    PASとUGS(Underground Gas Switch:地中線用負荷開閉器)との違いは、設置される場所です。PASは電柱の上に設置しますが、UGSは建物内のキャビネットに設置します。

    設置場所が違うのは、PASが架空引込方式、UGSが地中引込方式で設置するためです。

    UGSは地中配電線を利用している施設や建物に有効な設備です。電柱が建てられない地域などに採用されています。

    UGSは、電気関連の事故が発生した際に、波及事故の発生を防ぐ役割を担います。

    PAS(柱上気中負荷開閉器)の正しい知識を身につけよう

    PAS(Pole mounted Air Switch:柱上気中負荷開閉器)とは、建物や施設で電気事故が起きた際に、波及事故を防止するための設備のことです。電柱の上部に取り付けられる架空引込方式の開閉器を指します。

    PASを設置することで、電気系統の事故が発生した際に、近隣の電気機器に影響がおよびません。PASを設置せずに電気事故が起こると、近隣の建物も含めて長時間の停電が発生する可能性があります。

    停電で被害を受けた施設から、損害賠償を請求されることもあります。設置していない事業所や施設には、設置を勧めましょう。PASの正しい知識を身につけて、今後の業務に活かしてください。

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